11 ミカエラとジークリンデ

「もう、大丈夫です。おかげで落ち着きました」


 ジークリンデがミカエラから離れた。

 まっすぐにこちらを見つめる目には、強い意志の光が灯っていた。


「ノエルさんたちの分までがんばります。

「もう二度と犯罪者には屈しません。私、もっともっと腕を磨いて──誰にも負けない正義の騎士になります……!」

「正義の騎士……ですか?」

「級友からは子どもっぽいと笑われたこともあります。でも、私は本気です!」


 ジークリンデの瞳が燃えていた。


「そして、力だけでなく心も。命惜しさに体を与えるような真似は、もう二度としません」

「私も、同じです」


 ミカエラは真剣な顔で告げる。


「かつて多くの男に体を委ねる仕事についていました。欲に溺れ、堕落した日々を送っていました──」


 脳裏に、そのときの日々がよぎった。


 朝から晩まで、何人もの男と交わり、快楽を得た日々。

 それに伴って大金を手に入れ、欲望のままに遊び回った。


 恋人同士のような交わりから変態的なプレイまで、ありとあらゆる性戯を試し、溺れた──。


「お、おい、隊長」

「よいのです。私が娼婦だったことは事実です。隠し立てする気もありません」


 デルフィナに微笑むミカエラ。


「ですが、私は正義と規律に目覚めました。法を守り、すべての悪を駆逐する、正義の騎士──そんな存在になりたくて、王立騎士団に入りましたの」


 剣の才に恵まれ、瞬く間に騎士団で昇進していった日々を思い起こす。


 今までの堕落した生活から一転、厳しい修行と規律を守る日々。

 様々な犯罪者との──悪との苦闘。


 苦闘に次ぐ苦闘。

 時には、命を失いかけたときもあった。


 そんなときに、彼女は天から啓示を受けた。

 そして、悪を駆逐するための力を得た。


 そう、正義の神アル・レーアから三つの神器を授かったのだ──。




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