6 鮮血の牙

鮮血の牙クリムゾンファング』。


 強盗や詐欺、果ては殺人まで──あらゆる非合法な仕事で、年々勢力を拡大させている犯罪組織。


 そして──俺の両親と姉さんを殺した、憎むべき連中だ。


 フォス公爵への莫大な賄賂もあって、今のところ捕縛にはいたらず、その悪事もお目こぼししてもらっている。

 ……という噂だった。


 俺は町はずれの宿に泊まることにした。

 滞在予定は一週間。


 その間にカタをつけ、学園に戻らないと──な。




 夜になり、俺は宿を出て組織のメンバーを探した。


『審判の魔眼』を起動させて罪の値スコアを探りながら、適当に当たりをつけていく。


 そのうちに、組織の下部構成員らしき二人組の男を見つけることができた。

 場所は酒場が軒を連ねた、繁華街的な通りである。


 俺は酒場に入り、二人に声をかけた。


「俺はとある組織の使いだ。ちょっとした儲け話があるんだが……どうだ?」


 と、適当に思わせぶりなことを言う。

 同時に、『認識阻害の指輪』を作動させ、俺の雰囲気を『犯罪組織の末端構成員』を思わせるものへと誤認させた。


「ほう……?」

「儲け話、か?」


 警戒されたらまた別の方法を取るつもりだったが、案外あっさりとついてきてくれた。


 酒場から少し離れた路地裏に移動する。

 人気もないし、周囲からも見えにくい場所だ。


 ここでいいだろう。


「で、儲け話ってなんだよ、ガキ?」

「俺たちは『鮮血の牙』の者だ。言っておくが、半端な話だったら承知しねーぞ」


 組織の威光を笠に着るのが、いかにも小物という感じだった。


「お前たちの罪を、見せてもらう」


 俺の左目が赤い輝きを放つ。


 二人がこれまでに犯してきた罪を探知する。


 いずれも強盗を十数件、それに恐喝や傷害。

 そして──殺人を犯していた。


「遠慮なく殺せるな」


 つぶやく俺。


「来い『死を振り撒く神の槌ヴェルザーレ』」


 呼びかけに応じ、俺の右手に巨大なハンマーが出現した。

 同時に『死神の黒衣』を完全解放状態で身に着ける。


「まず一人目」


 振り下ろし、二人組のうちの右の男に叩きつける。


「ぶぎゅっ……!?」


 普段の約33倍の筋力で振り下ろしたヴェルザーレは、男に避ける暇も与えず上半身を潰し、殺した。


「ひ、ひい……ぃぃぃぃ……っ……!」

「黙れ」


 悲鳴を上げようとしたもう一人の男に近づき、みぞおちに拳の一撃。


「ご、はぁ……っ……!?」


 胃の内容物を吐き散らしながら、そいつは地面に倒れてのた打ち回った。


「お前が知っている『鮮血の牙』のことを洗いざらい吐け」

「そ、組織のことを……?」

「アジトの場所、構成員の人数、戦力──」

「言えば、こ、殺される……勘弁してくれ……」

「言わなければ、今死ぬ」


 俺はヴェルザーレを振り上げた。


「お前を殺して、別の奴を探して聞くだけだ」


 躊躇も、遠慮も必要ない。

 俺は冷ややかに男を見下ろした。


「わ、分かりましたぁぁぁぁっ! だ、だから、殺さないで……」


 男は震えながらうなずいた。


 俺の殺気が伝わったんだろう。

 あらためて別の構成員を探すのは面倒だったし、ありがたい。




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