4 決意

「いずれ必ず──いや、そろそろ時期が来たのかもしれないな」


 俺は一年ほど前の回想を打ち切り、つぶやいた。


「ミゼルくん、何か言った……?」


 キョトンと首をかしげるレナ。


「いや、気にしないでくれ」


 言いつつも、俺の心の奥で急速に燃え上がるものがあった。


 半ば無意識に、俺はそこから逃げようとしていたのかもしれない。

 目を背けたかったのかもしれない。


『奴ら』に向き合うということは、俺自身の心の痛みに向き合うこと。

 家族を亡くした喪失感に、悲しみに、怒りに、苦しみに──向き合うことだから。


 だけど、いつまでも目を背けてはいられない。


 神器の使い方は、ある程度習熟した。

 町の犯罪グループ程度なら敵じゃない。


 そのバックにいるであろうフォス公爵も。


 場合によっては、討ち果たしてやる──。




 ──あらためて俺自身の戦力を客観的に評価してみる。


 まずは俺、ミゼル・バレッタの素の戦闘力。


 学園ランキング底辺近くであり、王立騎士学園の中では最弱レベルだ。

 さすがに一般的な市民よりは強いはずだが、王立騎士団クラスや学園トップランクの足元にも及ばない。


 家族の仇である犯罪グループの構成員に対しても、戦闘力下位の連中とはよくて五分、もしかしたらそいつらにすら勝てないかもしれない。

 まして、上位の構成員には歯が立たないと考えたほうがいいだろう。


 歯がゆい限りだが、これが現実である。


 だけど、俺には死の女神ヴェルナから授かった十三個の神器がある。


 第一の神器『死を振り撒く神の槌ヴェルザーレ』。

 不可視の力を放ち、またチャージすることで他の神器の特性を破壊する巨大なハンマーだ。


 第二の神器『死神の黒衣』。

 装着者の身体能力を約33倍にアップさせる。

 収納状態での限定解放も可能だが、こちらはアップ率が約11倍と完全解放状態に比べると、かなり性能が落ちる。


 第三の神器『審判の魔眼』。

 対象がこれまでに犯した罪を探知し、数値として表示できる。

 殺人などの罪を犯し、この数値が一定を超えている者を俺は優先的に狩っている。


 第四の神器『認識阻害の指輪』。

 対象の認識を改変することが可能。

 ただし周囲により高レベルな神器などがあった場合、この機能が発揮されないこともある。

 今のところ、俺の悪人殺しの証拠隠滅のために使うのが主な用途だ。


 第五の神器『影の支配者』。

 影の内部に入り、また影の中を移動することもできる。

 成長型の神器のため、いずれはもっと色々なことができるようになる可能性もある。


 ──以上が、俺が現在使用可能な各神器の特性である。


 これらを使った総合的な戦闘能力なら、おそらく俺一人で奴らを全滅させられるだろう。

 とはいえ、油断は禁物だ。


 ちなみに、今までに戦った神器使いは三人いるが、彼ら──『殺戮の宴』のメンバーだったラーミラとザハト、そして先日のガイウスの神器を使うことはできない。

 戦いの後、俺がその神器を使えないか試してみたのだが、持ち主が違うからなのか、起動しなかった。


 ただ、使用できないからといって放置するのは危険すぎる。


 俺には使えなくても、他に使える者が現れるかもしれない。

 そして、そいつが神器を悪用するかもしれない。


 というわけで、ラーミラの『幻惑の魔眼』、ザハトの『百眼の邪鬼』、ガイウスの『鬼王剣』はいずれも俺が破壊してある。






※ ※ ※


カクヨムコン参加中です!


よろしければ、

☆☆☆

をポチっと押して

★★★

にしていただけると、とても嬉しいです。


★やフォローは読者選考にもかかわってくるので、応援ぜひぜひよろしくお願いします~!



下の2作もカクヨムコン応募中ですので、こちらも応援よろしくです!


【朗報】駄女神のうっかりミスで全ステータスMAXになったので、これからの人生が究極イージーモードな件【勝ち組】

https://kakuyomu.jp/works/1177354055077095875


九つの魔導書(全員美少女)に選ばれし者 ~パーティ追放された俺は、真の力に目覚めて史上最強の賢者になったので、これからは自由気ままに生きていこうと思う~

https://kakuyomu.jp/works/1177354054906040943

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る