第5章 正義と復讐
1 かつて、学び舎で
十年前、俺は両親を失った。
小さな酒場を経営していた父さんと母さんは、町を牛耳る犯罪グループとちょっとしたことからトラブルになり──その果てに、あっさりと殺されたのだ。
そいつらのバックには領主がいたため、罪には問われなかった。
俺と姉さんは、そいつらを絶対に許さない、と心に誓った。
そして姉さんは騎士になってそいつらを捕まえるため、王立騎士学園に入学した。
だけど、数年後──大勢の男に犯された上で、殺された。
残された俺は、誓った。
罪を犯しながら、のうのうと生きている奴らを絶対に許せないと。
だから、俺は騎士を目指した。
姉さんの代わりに。
姉さんの分まで。
いつか王立騎士団に入り、奴らを捕らえるつもりだった。
強さが欲しいと思った。
復讐心は当然あったけど、それだけじゃない。
俺の根幹にあったのは『理不尽な暴力への怒り』だったんだと思う。
あいつらみたいな連中から──この世のすべての悪から、罪もない人々が傷つけられないように。
護ることができるように。
だけど、俺には剣の才能がなかった。
決定的に、なかった。
王立騎士学園に入り、必死で腕を磨いたが、学園ランキングは常に底辺だった。
……といっても、まったく強くなれなかったわけじゃない。
授業などで指導を受け、あるいは俺自身の自主的な訓練の成果もあり、剣の腕はそれなりに上がっていったと思う。
ただ、周囲はそれ以上に強くなっていった。
仮に俺の腕が10から20まで上がったとしたら、周りの連中は同じ期間で50から100へ、200から300へ、人によっては500から1000くらいまで上がっている──そんなふうに感じた。
地力も、訓練による成長速度や上昇値も、まるで敵わない。
俺は、置いて行かれる一方だった。
底辺をさ迷う中で、想いはますます強くなった。
力が欲しい、と。
そんな日々の中、出会ったのがレナ・ハーミットという少女だった。
王立騎士学園の高等部に入学した俺は、『
ちなみにクラスは四つあり、他は『
どのクラスにも序列はなく、入学試験での上位から下位までがまんべんなく四クラスに振り分けられていた。
「初めまして、レナ・ハーミットだよ」
「ミゼル・バレッタだ」
俺とレナは隣同士の席になった。
そのときは、俺はもちろんレナも今のように学園ランキングトップクラスではなかったため、ごく平凡な生徒だった。
……たぐいまれな美少女ということで、男子の間ではすでに騒がれていたが。
「うわ、美少年……ど、どうしよ、緊張するよぉ……」
「緊張?」
「はわわっ、聞こえてたっ!?」
あたふたと両手を振るレナ。
「よく分からないが……よろしく」
「えへへ、よろしくねー」
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