23 神の槌VS鬼王剣4

 刀身から無数の光刃が放たれた。


 超至近距離で、俺に向かって。


「ははははは! いくらお前の身体能力が化け物じみていても、この距離とタイミングで避けられるか? ああ!」


 ガイウスが勝ち誇る。


「──確かに、無理だな」


 冷静に判断する。


 装着者の運動能力を約33倍にアップさせる『死神の黒衣』といえども、さすがに光刃との距離が近すぎる。

 おまけに不意打ちだ。


 光刃が眼前まで迫る──。


潜行開始ダイビング


 次の瞬間、俺は神器『影の支配者』を作動させた。


 ずぶぶ……ぶぶ……。


 足元の影に、俺の全身が沈みこむ。


「なっ!?」


 驚きの声を上げるガイウス。


 すべての光刃は、たった今、俺がいた場所を空しく切り裂いていった。


 まさしく、間一髪。


 俺は影から浮上し、奴の前に立つ。


「今のはヒヤッとしたぞ。身体能力で避けるのは無理だった」


 俺はガイウスを冷然と見据えた。


「影の中に避難するこの神器がなければ、お前の勝ちだった……惜しかったな」

「う、うう……」


 ガイウスから、先ほどの哄笑がすっかり消え失せていた。

 顔面蒼白だ。


「続きだ、ガイウス・イーファス」


 俺はヴェルザーレを振りかぶり、言い放った。


「次の不意打ちの手立てでも考えるか? それとも、最後は英雄らしく正面から戦って死ぬか? 選べ」


    ※


 SIDE ガイウス


「お、俺は英雄ガイウスだぞ! 世界最強の傭兵なんだ! それをお前のようなガキが──」


 ガイウスは憎しみを込めてミゼルをにらんだ。


「俺が今の強さを手に入れるために、どれほどの修練を積んだか……どれだけの修羅場をくぐってきたか……お前に分かるか!」


 絶叫する。


 生まれたときから、常に戦場で生きてきた。

 呼吸をするように剣を振るい、命懸けで数多の戦場を駆け抜けた。


 暴力の喜び。

 勝利の高揚。

 略奪、凌辱、賞賛、栄光──。


 世界最強の傭兵として、その勇名はあらゆる国を巡った。


 それが今、こんな場所で──一介の学生を相手に、生涯が終わろうとしている。


(ふざけるな……!)


 ガイウスは魂の底から憤る。


 死ぬはずがない。


 俺が──英雄ガイウスが、こんなところで死ぬはずがない!

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