22 神の槌VS鬼王剣3

「て、てめえは……神にでもなったつもりか……」

「違うな」


 ばさり、と俺のマントの裾が風でひるがえった。


「神じゃない。俺は──正義の味方だ」

「ひ、ひいっ……」


 ガイウスは踵を返して走りだした。

 逃げるつもりか。


「『影の支配者』──潜行開始ダイビング


 俺の左手の甲から赤光があふれ、髑髏のような紋様が浮かび上がった。


 同時に、影の中に入って移動する。

 ガイウスの行く手を阻むように、奴のすぐ前方に伸びる影から地上にふたたび現れる。


「くっ……」

「逃がさない」


 俺はハンマーを構え、告げた。


「さあ、教えろ。お前はなぜ俺の命を狙った?」

「う、うう……」

「答えなければ、この場で潰す。今すぐに」

「ま、待て、待ってくれ!」


 ガイウスはおびえた顔で叫んだ。


 すでに今までの攻防で俺との戦闘能力差は把握しているのだろう。

 そして今ので、逃走も困難だと悟ったはずだ。


「分かった、話す! だから助けてくれぇ!」


 ガイウスは懇願しながら、手にした『鬼王剣』を放り捨てた。


 自ら神器を手放したか。

 どうやら抵抗する気力を完全に失ったようだった。


「聞こう」


 俺は槌を下ろした。

 もちろん、奴の反撃や逃走に備えて気を配ることは忘れない。


「実は──」


 ガイウスが話し始めた。




「『殺戮の宴キリングパーティ』は伯爵とつながっていたのか」

「俺と似たようなものだ。奴らも汚れ仕事に手を染めていた」


 ……審判の魔眼でチェックしたときに、その辺りの背景は見えなかったな。

 何か理由があるんだろうか。


 ただ、奴らが罪もない人間を大勢殺していたのは魔眼を通して確認した。

 己の快楽のためであろうと、伯爵の命令であろうと、罪の重さに変わりはない。


「で、お前は奴らを殺した犯人探しをしていたわけだ」

「あ、ああ、伯爵に命じられて、な。犯人は神器使いのようだったし、この間のことで、お前もどうやら神器使いだと分かったからな。犯人か、あるいはかかわりのある者──と踏んで、お前に近づいたんだ」


 と、ガイウス。


「確かに『殺戮の宴』のメンバーは俺が殺した。十七人──いや、十八人だったか。全員な」

「……やはり、そうか」


 ガイウスの表情がいっそう険しくなる。


「な、なあ、これだけ話したんだ。俺のことは見逃してくれないか? も、もちろんお前のことを伯爵に報告したりはしない。いや、こういうのはどうだ! 俺はお前とは別の、無関係な人間を犯人だと報告しよう! そうすれば、お前は伯爵から狙われずに済む──」

「無関係の人間を巻きこむようなやり口を、俺が呑むと思ったか?」

「うっ……」


 ガイウスがじりじりと後ずさる。

 と、その眼光が突然強まった。


「だったら、やっぱり殺し合いしかねぇな!」


 同時に、地面に放り捨てられていた『鬼王剣』がまぶしく発光する。

 この剣──所持者が触れていなくても作動するのか!?




※ ※ ※


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