21 神の槌VS鬼王剣2

 こいつは生きる価値のない悪だ──。


 巨大な槌ヴェルザーレを振りかぶった俺はガイウスを冷然と見据えた。


『審判の魔眼』でこいつの罪状は確認できた。


 戦場での多くの略奪行為──その際に非戦闘員を多数殺害し、多くの女性を暴行していた。

 被害者は百や二百じゃない。

 なにしろ、こいつは世界中の戦場を回ってきた奴だからな。


 膨大な数の男女が被害に遭っているようだ。


 それに加えて、伯爵の命令で多くの暗殺稼業に手を染めている。


 抹殺すべき悪は、いつも通り淡々と、粛々と、叩き潰す。


 ガイウスを殺すのは難しくないだろう。

 どうやら、奴の神器はクラスAのようだが、クラスSであるヴェルザーレの攻撃力の前には敵ではない。


 ただ、一つ気になることがある。

 なぜ俺を襲ってきたのか、だ。


 先日のことを恨みに思ったんだろうか。

 恥をかかされた仕返し、だろうか。


 確かにガイウスはプライドが高そうだし、伯爵の客人だから殺人の一件や二件はもみ消せるだろう。


 だが、それだけが──単なる私怨だけが理由なんだろうか。


 俺の直感が、違うと言っていた。

 もっと別の理由があって、奴は俺を襲ってきたんだ──と。


 最終的に殺すという決定は変わらないが、まずそれを吐かせてからだ。


 俺はすぐに致命の一撃を放つことはせず、じりじりと間合いを詰める。


 それに合わせて、ガイウスが少しずつ後ずさる。


「確かにお前の神器は強力だ。しかも複数持っているとは……!」


 奴は明らかにひるんでいるようだった。


「素の戦闘能力なら、お前の方がはるかに上。だが、神器を含めた総合的な戦闘能力なら、俺の方が圧倒的に上だ」


 俺は英雄と謳われる傭兵を冷ややかに見据えた。


「勝ち目など万に一つ──いや、億に一つすらない」

「く……うう……」

「俺にはお前の罪が見える。お前は、これまで多くの人間を手にかけてきた」

「……傭兵なんだから当たり前だろう。それとも何か? 戦場で、黙って殺されろとでも言うつもりか」

「戦場の話じゃない。そこでの略奪行為や民間人への殺傷、強姦……さらに伯爵の手先として、いくつもの汚れ仕事に手を染めている」

「っ……!」


 ガイウスの表情が凍りつく。


「なぜ、それを……いや、それも神器の力か」


 しらばっくれる余裕すらないのか、俺の言葉を肯定するガイウス。


「腐敗しきったこの国で、伯爵の庇護下にあるお前を裁くことはできない。ゆえに──俺が代わりに裁きを行う」


 俺はヴェルザーレを振りかぶった。




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