18 神器継承3

「ひゃっはー! 弱いな! お前ら、弱すぎだぜ!」


 ガイウスは歓声とともに戦場を駆け抜けていた。


 手にした長剣を振るうたびに、敵兵の首が飛ぶ。

 腕や足を斬り飛ばし、胴を薙ぐ。


 それは──一方的な虐殺だった。


 八歳にして、ガイウスの戦闘レベルは並の傭兵とはあまりにも開いていた。

 人を殺したのは初めてだったが、思った以上に何も感じない。


 全身に返り血を浴び、悪鬼のような形相でガイウスは兵たちを斬殺し続けた──。




 気が付けば、一人だけ前に出すぎてしまったらしい。

 仲間たちは後方で戦っている。


「……っと、あんまり単独行動してると親父たちに怒られるか」


 ガイウスは苦笑交じりに引き返した。


 そこには──無数の死体が折り重なっていた。

 どうやら敵国に高火力魔法の使い手がいたらしい。


 えぐれてクレーターになった地面から、焦げ臭い煙が立ち上っている。

 すでに戦線が移動したらしく、周囲に敵味方の姿は見当たらなかった。


「おい、親父? みんな?」


 声をかけるが返答はない。


 ガイウスは呆然と歩いた。


 周囲にはいたるところに死体が倒れている。

 これが、戦場なのだ。


 自分は強いからこうして立っているが、大半の弱者は踏みにじられて死ぬ──。


 さらに歩くと、地面に転がっている首に気づいた。


 ──ガイウスの、父親の首だ。


「親父……」


 悲しみは、思ったよりも少なかった。

 代わりに湧き上がって来たのは嘲りだ。


「なんだよ、弱いじゃねーか」


 口の端を歪めて、笑う。


 見回せば、他の仲間たちの首や死体らしきものがあちこちにある。

 この辺りで戦っていて、高火力魔法に巻きこまれたらしい。


 全滅である。


「弱いから死ぬんだ。まあ、いい。こんなに弱いんじゃ、どのみち俺の足手まといだからな」


 もう十分に力を手に入れた。

 これからは一人で生きていこう──。




 十年以上が過ぎ、ガイウスは世界中の戦場を放浪した。


 あらゆる戦場で負け知らず。

 いつしか、超越等級オーバークラスと呼ばれる世界最強の傭兵となっていた。


 殺戮に次ぐ殺戮。

 暴力に次ぐ暴力。


 それらの喜びは味わえば味わうほど肥大化していく。


「きゃあっ、お、お許しください!」

「へっ、今日は百人以上を斬ったんだ。ご褒美代わりにいただいていくぜ!」


 そのときの戦場は、戦火に巻きこまれた村だった。

 いつも通り、ガイウスは戦鬼のごとき活躍で敵兵の半数を撃破。


 ──その後、村娘の中から特に美しい者を見つけると、草むらに押し倒した。

 周囲の兵たちが歓声を上げる。


「い、いやぁぁぁぁっ」

「へへへ、戦いの後はこれが楽しみなんだ! この辺りのめぼしい女は全部俺がいただくからな!」


 ガイウスは雄たけびを上げて、村娘を抱きすくめる。


 服をはぎ、むき出しになった乳房にむしゃぶりついた。

 先ほどまでの戦闘での高揚と、これから行う凌辱への興奮で、股間が熱く充血している。


 村娘の白い両足を開き、ガイウスは彼女の中に押し入った。


「やめてっ、許してぇぇぇぇぇ……っ」


 悲鳴とすすり泣きが響く。


 ガイウスにとっては心地よい旋律だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る