13 交わる運命1

 俺は五人のごろつきを全員、ヴェルザーレで叩き殺した。


「いやー、容赦なしだね~。最高だね」


 ヴェルナが嬉しそうだ。


「実にいい殺しっぷりだったよ、うん」


 死の女神だけあって殺伐とした感想だ。


「この分だと全部の神器を解放しちゃうかもね~。神が人間に与えられる神器の上限数は十三──それをすべて解放した人間は歴史上、一人もいないんだよ。君が初めての人間になるかも」


 ヴェルナがにっこり笑う。


 すべての神器の解放、か。

 いったいどれほどのスコアを稼げばいいものやら。


 もしかしたら万単位──あるいはもっと多くの悪を殺さなければ、到達できないかもしれない。


「そのときには君は神に匹敵する力を得ていると思うよ。あ、そうなったら結婚してあげよっか? ふふふ」


 ヴェルナが本気とも冗談ともつかない口調で笑う。


「遠慮しておく」

「即決!? ひどっ!?」


 死の女神はショックを受けたようだった。


「俺は神になりたいわけじゃない」


 彼女をまっすぐに見つめ、告げる。


「俺がなりたいのは──正義の味方だ」




「そろそろ時間だし、帰るね~」


 明け方ごろになり、ヴェルナは天界に戻ることになった。


 町中を散策したり、公園で一緒にベンチに腰掛け、たわいもないことを話したり。

 騎士学園のことも聞かれたりした。

 レナやジークリンデのことを話すと、ヤキモチを焼かれてしまった。


「むむむ……ミゼルくんの周辺には可愛い女の子が何人もいるんだね。妬けちゃうなー」

「彼女たちとはそういう関係じゃない」

「ミゼルくんって、見るからに鈍感だしねー。ボクがもっと君の側にいられたら……うう、神と人間の恋はハードル高いよぉ」


 ヴェルナはそんな感想をつぶやいていた。


「あ、一つ忘れてた」

「えっ」


 突然、周囲が薄暗くなった。


「異空間を作ったんだよ。ここから先は、二人っきりで──」

「むぐっ!?」


 まったくの不意打ちだった。


 いきなりヴェルナの顔が近づいてきたかと思うと、俺は唇を奪われていた。


 生まれて初めて味わう、他者の唇の感触。

 蕩けるように柔らかく、魅惑的な弾力のある女神の唇──。


「な、何を……!?」


 俺は呆然として、ほとんどなすがままだった。


「えへへ、君ってなんだか可愛くて……つい奪っちゃった」


 ヴェルナが悪戯っぽく笑う。

 それから急に照れくさそうな顔をして、


「他にも色々……奪っちゃいたいな。ボクも初めてだから、お互いに──」


 熱い吐息が近づいてくる。


 ぞくりと背筋が粟立った。

 魅入られたように、俺はまったく動けなかった。


 下腹部が熱くなる。

 全身の脈が激しくなるような、強烈な興奮。


 俺は──。


「お互いに、求め合ってるんだよ。身も心も──」


 ヴェルナが濡れたような瞳で、俺を見つめる。


「神と人の出会いは偶然じゃない。運命なの。だから逃れられない。特別なきっかけなんていらない。ほら、こうしてお互いに『欲しい』って想い合ってるでしょ?」


 また、唇を奪われた。

 驚きはあったが、不快感はなかった。


 いや、むしろ──。


 俺は震える手をヴェルナに伸ばす。

 銀色の長い髪にそっと触れ、純白のドレスに指をかける。

 ゆっくりと彼女の服を脱がせていく──。

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