12 作業のごとく

「うわー、綺麗な顔してバイオレンス全開だねー。でも、そういうところが好きだよ」


 にっこりと笑うヴェルナ。


「非難は、しないんだな」


 さすがは死の女神といったところか。


「そもそも与えた神器をどう使うかは、その人間の自由だよ。神はいちいち関与しないし」


 ヴェルナが笑みを深くする。


「どんな報いを受けても、それもまた自己責任──だね」


 それは──。

 朗らかでありながら、どこか冷やかにも感じる不思議な笑顔だった。


 人間味とはまるで無縁な笑み。


 女神の──笑顔。


 その無機質さに一瞬ゾッとなった。

 どれだけ人間と同じ姿をしていても、ヴェルナの本質は女神なのだと思い知らされる。


「ん、どしたの?」


 ヴェルナが笑顔のまま、俺を見つめる。


「……いや。報い、か」


 俺は気を取り直し、歪んだ笑みを返した。


「なら、その報いごと叩き潰すさ。この世界の悪は、俺がすべて駆逐する」


 それが、俺が決めた神器の使い道だから。


「まずはお前たちだ──」


『黒衣』をまとった。


 魔眼を赤くきらめかせる。

 奴らの罪を計測し、そして判定する。


 奴らは全員が殺人経験者だった。

 己の欲のためには、他者の命を平気で奪う。


 よって──死刑。


「討つべき、悪だ」


 俺の手に巨大な槌が出現した。


「全員死ね」


 約33倍の身体能力を全開にして、まず一人目に肉薄する。

 槌を振り下ろし、そいつを頭から叩き潰した。


 血と脳漿がまき散らされる。


 他の男たちはワンテンポ遅れて、ようやく反応した。


「ひ、ひいいいいいいいいいいいいっ!?」

「な、なんだ、こいつ!」

「殺さないで、殺さないでぇぇぇぇぇぇっ!」


 悲鳴を聞き流し、俺は次々と槌を振るった。


 そのたびに潰されていくごろつきたち。


 容赦も、情けも必要ない。

 これは駆除だ。


 生きる必要も、資格もない悪を淡々と排除していく作業に過ぎない。


 実際、最初のころに比べると格段に慣れたせいで、作業感しかなかった。

 相手は死んで当然の男たち──いや、害虫だ。


 こいつらが生きていれば、また誰かを傷つけ、あるいは殺すかもしれない。

 仮にそうでなくても、すでにこいつらは取り返しのつかない罪を犯している。


 この国に、悪を裁く力はない。


「だから、俺が裁く。裁き続ける」


 幸いにして、魔眼によって相手の罪を図ることができる。

 俺の主観でなく、魔眼によって判定された結果をもとに、真実の正義を執行し続けることができる。


 ほどなくして、俺の周囲には五つの死体が転がった──。

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