7 修練と再会

 その後、俺たちはふたたび帰路についた。


「すごかったねー、ミゼルくん。あたし、感動しちゃった」


 レナが目を輝かせている。


「私も驚きました。まさかガイウス様と渡り合うなんて」


 ジークリンデもキラキラした目で俺を見ている。

 ……少しやりすぎただろうか。


「……ありがとうございました、ミゼル先輩」


 ジークリンデが俺に近づき、耳打ちする。


「もう大丈夫か?」

「……はい、あなたがいてくれましたから。安心できました」


 俺を見つめる彼女の顔は上気していた。


「むむむ……ちょっと近づきすぎじゃない、リンデちゃん?」

「っ!? す、すみません、つい……」


 レナにツッコまれ、慌てて身を引くジークリンデ。


「それにしても、あの動きはなんだったの? 模擬戦では、あんな技は使わなかったよね」

「私も気になります」


 二人が左右から詰め寄る。


「いや、あれは──」


 俺は口ごもる。


 試しに初歩的なフェイントをやってみたら、まさか分身みたいな効果を生むとは思っていなかったのだ。

『黒衣』の効果である常人の約33倍の運動能力──まだまだ試す余地や鍛える余地は存分にありそうだ。


 ただ、馬鹿正直に『常人の約33倍の運動能力で生み出した残像だ』なんて言うわけにもいかない。


「その……マグレだ」


 とりあえず、そういうことにしておいた。


「マグレ?」

「でも、マグレであんな動きってできるんでしょうか?」

「マグレと言ったらマグレだ」


 俺は押し切った。


「うーん……ミゼルくんがそう言うなら。でも怪しい」

「……絶対、何か隠してますね」

「リンデちゃんもそう思う?」

「思います。ミゼル先輩って嘘が下手なタイプですよね」

「でも、そこがいい」

「レナ先輩、デレデレですね」

「うふふふふ」


 などと女子トークが聞こえてくる。


 ……二人とも納得はしてなさそうだが、まあいい。




 男子寮と女子寮の前で、俺は二人と別れた。


「また明日ね、ミゼルくん」

「今日はありがとうございました、ミゼル先輩」


 二人が笑顔で手を振り、離れていく。


 俺も手を振り、男子寮に入った。

 ガイウスとの戦いの最中、奴がつぶやいたセリフを思い出す。




『この人知を超えた能力……まさかお前、神器使い……!?』




 あいつは神器の存在を知っているようだ。


 あるいは、奴も神器使いなんだろうか。

 だが、なんらかの神器を使っている様子はなかった。


 まあ、今はガイウスのことより自分の力を磨くことに専念しよう。

 さっきの戦いで会得した分身状のフェイントなんかも、感覚を忘れないうちに反復練習して会得しておきたい。


「『死神の黒衣』──完全解放セットアップ


 俺は寮の中庭に出ると、漆黒のマントをまとった。


 さっきの動きを試してみる。


 ただ──自分では『分身具合』が分かりづらいな、これは。

 やはり対人で練習して、相手からどう見えるのかを教えてもらったほうがよさそうだ。


 明日、レナかジークリンデに頼んでみるか……。


「へえ、第五の神器まで解放したんだね。順調じゃない」


 ふいに背後から声が響く。


 この声──。

 振り返るまでもなく、分かる。


 俺に神器を授けた死の女神ヴェルナだろう。


「えへへ、また会いに来たよ。君の愛しの女神、ヴェルナさんじょーうっ」


 いきなり背後から抱きつかれた。


 ……愛しの女神では、断じてないが。





※ ※ ※


転生特典【経験値1000倍】を得た村人、無双するたびにレベルアップ! ますます無双してしまう 2

https://www.kadokawa.co.jp/product/322005000747/

新刊、発売中です! タイトル通りの主人公最強ストーリー! 興味を持たれた方は、ぜひ!(URL先に試し読みもあります)



よろしければ、☆☆☆をポチっとして★★★にしていただけると、更新のモチベーションにつながります。

ぜひ、よろしくお願いします~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る