7 影の支配者2
「なんだ、お前は……?」
ナーグが眉を寄せた。
「ああ、見たことがあるぞ。ミゼル……だったか? うちのクラスの女子で騒いでる奴がいたな。学園ランキングは底辺のくせに、顔だけはいいんだよな……気に食わねぇ」
不快げな顔で床に唾を吐く。
「殴ったことを彼に謝罪しろ。それから恐喝もやめろ。どちらも犯罪だ」
「ああ?」
ナーグが怒声を上げた。
「ミゼルごときが偉そうな口きいてくれるじゃねーか? ええ、ランキング底辺さんよぉ」
俺をにらみつけるナーグ。
「っていうか、お前も有り金出せよ。今月は金欠でなぁ」
「恐喝は犯罪だと言ったはずだが?」
「恐喝じゃねーよ。借りるだけだ。そっちの奴からも借りようとしてただけだしな。貸し借りなら犯罪じゃねーだろ、あ?」
「状況や態度から見て、お前が借りた金を返すとはとても思えない」
言って、俺はナーグに手を伸ばした。
すでに『死神の黒衣』の簡易モードは発動させてある。
通常の約11倍の運動能力を発揮。
超速で間合いを詰め、奴の反応よりも早く、奴の喉元に手を伸ばす。
片手で締め上げた。
「は……がぁ……っ!?」
そのまま軽く持ち上げる。
息が詰まったナーグの顔が、みるみる紅潮していく。
「もう一度言う。彼に謝罪しろ。それから恐喝もやめろ。二度と、だ」
「あぐ……ふ……ぅ……」
「約束できるか?」
俺は指先に力を込め、さらに締め上げた。
ナーグはすでに涙目だ。
「約束できるか?」
重ねてたずねる。
ナーグは目でうなずいた。
「なら、この場は収める。次はこの程度では済まない」
俺は手を放した。
「て、てめぇは一体──」
「俺は、正義を為す者だ」
「は、はあ? 正義の味方気取りかよ」
呆れたようなナーグを、俺は一瞥した。
これ以上の言葉はいらない。
どの道、悪に言葉は届かない。
だから俺は力を振るっている。
正義の、名の下に。
その後、ナーグは彼に謝罪し、逃げるように去っていった。
彼もまた俺に礼を言い、去っていく。
一人残された俺は、小さくため息をついた。
いちおう『審判の魔眼』で奴の
少なくとも殺人は犯していないらしい。
もし、殺人者なら始末していたところだ。
いや、いずれはこれくらいの罪レベルの人間も殺していったほうがいいんだろうか?
生きる価値のない悪と、生きる価値のある悪。
神ならぬ俺に、どこまで判断していいものか。
少なくとも──法の裁きを逃れているような殺人者は根絶やしにするつもりだが。
と──そろそろ午後の授業が始まる。
思索にふける時間はもうないな。
ナーグたちとのかかわりで時間を使ってしまった。
俺は神器の性能テストを終えることにした。
影の中を移動する、というのも使いようによってはかなり便利そうだ。
今後の俺の活動に役立てよう。
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