5 レナの提案

「いいですね。レナ先輩も付き合っていただけるなら、より有意義な訓練になりそうです」

「でしょ? あたしはミゼルくんといちゃらぶできて、リンデちゃんは訓練できて……みんな、幸せ!」

「……レナ先輩、下心丸出し」

「はっ、つい心の声が!」

「でも、先輩の提案には大賛成です」

「よし、これで決まりだね」

「待て。俺は訓練を承諾したわけじゃな」

「多数決!」

「二対一です!」


 レナとジークリンデが口々に言った。


「というわけで、放課後にこの三人で集まりましょ。やった、ミゼルくんと一緒にいられる口実ができたっ。ふふふふ、いちゃいちゃするぞー、超するぞー」

「……レナ先輩、さっきから心の声がダダ漏れでは?」


 浮かれるレナに、ジークリンデがツッコむ。


「あ、いけない。えへへ」

「確かにミゼル先輩、かっこいいですもんね」

「でしょ?」


 見つめ合い、うなずき合う二人。


「だから訓練を承諾したわけじゃないと──」


 言いかけて、俺はふと考え直した。


 この二人は学園ランキングでトップクラスだ。

 俺は神器の力で常人の数十倍の運動能力を持っているものの『戦闘技術』という点に関しては、彼女たちに大きく劣るはず。


 ならば、訓練を通じて二人からその技術を学べるかもしれない。


「分かった。放課後の訓練に付き合うよ」

「本当ですか? ありがとうございます、師匠!」


 ジークリンデの顔がパッと輝いた。


「いや、師匠はやめろ」

「では、ミゼル先輩。感謝します!」

「あたしも行っていいんだよね、ミゼルくん」


 レナも満面の笑みを浮かべている。


「ああ、頼む」

「やったー! 訓練という名の実質デートだよね、これ!」

「デート……?」


 レナの言うことは、ところどころよく分からないが──。

 半ばなし崩し的に、俺たち三人は放課後に訓練することになった。




 昼休み。


「今のうちに、こいつを試しておくか」


 俺は中庭の隅に一人でたたずんでいた。


 左手の甲を見下ろす。

 そこには髑髏を意匠化したような輝きが淡く浮かんでいた。


 第五の神器『影の支配者』。


『効果:所持者は影に干渉する能力を得る。習熟度に従い、干渉範囲が増大します』


 神器の説明はそうなっていた。


 だが、『影に干渉する』というのは、具体的にどんなことができるのかが分からない。

 放課後はレナやジークリンデとの訓練があるし、神器の性能テストをやるなら今のうちだろう──。


※ ※ ※


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