3 正義と女帝
「教えを請いたい……?」
ジークリンデの突然の申し出に、俺は戸惑っていた。
「はい、あなたの強さを私も身に着けたいんです」
さらに詰め寄ってくるジークリンデ。
「恥ずかしながら、私は恐怖にかられ、悪に立ち向かうことさえできませんでした」
ジークリンデがうつむく。
凛とした表情が曇った。
全身が震えている。
「ジークリンデ……?」
「私は犯罪者に屈しました。仲間の仇を討とうともせず、命が助かりたい一心で自ら彼らに体を捧げたんです」
「いいんだ。もう話さなくて」
「いいえ、言わせてください!」
ジークリンデは告白を続ける。
「悪に立ち向かう正義の騎士になる──そんな気持ちで学園に入ったのに、私はただ浅ましく命乞いして、彼らに犯されて……私は今もずっと悔やんでいます。なぜ、強い気持ちで立ち向かえなかったのか、と」
そこまで言って、彼女は顔を上げた。
涙に濡れた瞳で俺を見つめる。
「だから、あなたの姿に感銘を受けたんです。たった一人で彼らに立ち向かい、容赦なく打ち倒して……最後は、あの区画にいた全員を殲滅したんですよね?」
「……相手が犯罪者とはいえ、殺人は殺人だからな。返答は控えさせてもらう」
「あ、確かにこんな場所で言うことじゃないですね。すみません」
ジークリンデが頭を下げた。
「では、最初の話に戻りますけど……つまり、私はあなたの強さに感動したんです。あなたの正義に心打たれたんです。どうか、私にご指導を!」
俺にすがりつく彼女。
「ちょっと飛躍している気がするが……」
「私はあなたのようになりたいです。だからお願いします。私に戦い方を教えてください──」
なおも彼女に抱き着かれ、俺は困惑を強めた。
一体、どう対応したらいいんだ?
ジークリンデの気持ちは何となく分かった。
『殺戮の宴』の殺人者たちを相手に、精神的に屈した自分が許せないんだろう。
だから、もっと強くなって──過去の自分より強い心を身に付けて、その過去を払拭したい。
そんなところじゃないだろうか。
「とりあえず離れてくれ。こんなにくっつかれると話しづらい」
俺はジークリンデから離れようとした。
と、そのとき、
「えっ、二人とも何してるの……っ!?」
悲鳴のような声が、背後から聞こえた。
誰だ──!
俺はギクリとして振り返る。
「なんか詰め寄ってたよね? もしかして抱き合おうとしてた? っていうか、キス? キスなの? まさか、二人ってそういう関係──」
そこに立っていたのは、青い髪をポニーテールにした快活そうな女子生徒。
ジークリンデに負けず劣らずの美少女だ。
クラスメイトのレナ・ハーミットだった。
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