19 第五の神器

 光があふれ、俺の右手から宝玉が現れた。

 表面に『5』と書かれている。




『神器No.5の解放条件をクリアしました』

『名称:影の支配者』

『クラス:B』

『タイプ:寄生(成長)』

『効果:所持者は影に干渉する能力を得る。習熟度に従い、干渉範囲が増大します』




「影に干渉……?」


 つぶやいたとき、宝玉が閃光とともに弾ける。

 同時に、左手に熱い感触が走り抜けた。


「これは……!」


 左手の甲に髑髏を意匠化したような紋様が浮かんでいる。

 赤い輝きを発したその紋様は、しばらくしてスッと薄れ、消えてしまった。


 神器の説明に『寄生(成長)』とあったし、『審判の魔眼』と同じく、俺の体内に宿り、効果を発揮する神器のようだ。

 しかし、『影に干渉する能力』というのは具体的に何ができるのか。


「実戦で使う前に、ある程度テストしておく必要があるな……」


 とはいえ、さすがにここで試すわけにもいかない。

 殺人現場から一刻も早く離れたほうがいいだろう。


「とりあえずは帰るか」


 俺は『認識阻害の指輪』の特性を発動した。

 もし周辺に目撃者がいた場合は、その認識を消去するよう神器に命じておく。


 それから、帰路についた。


 殺した数は、十七人。

 いずれも快楽殺人者の集団──『殺戮の宴キリングパーティ』。


 悪の集団を一つ滅ぼしたわけだ。


 多少の達成感はあったが、それ以上に危機感のようなものがあった。


 一つは、彼らが国の重鎮とつながりがあるようなことを匂わせていたこと。

 そしてもう一つは、神器使いの存在だ。


 俺以外にも、神器を持つ者はいる。


 今回はラーミラにせよ、ザハトにせよ、クラスAの神器持ちで、多少手こずらされた。

 最終的に倒すことができたものの、いずれは──俺と同じクラスSの神器を持つ犯罪者に出会うかもしれない。


「俺も、もっと力をつけないとな」


 まずは、未解放の八つの神器を早く使用可能にしたいところだ。


「六つ目の神器の解放条件を教えてくれ」


 俺は虚空に呼びかけてみた。


『必要なスコアは75000です』


 声がする。


「……また随分と増えたな」


 四つ目が5000、五つ目が25000と来て、六つ目が75000とは。

 一体、何人の犯罪者を殺せばいいのか。


「地道にやるしかない、か」


 とにかく目につく『悪』を次々と始末して回れば、いずれ到達するだろう──。




 翌日、俺はいつも通りに王立騎士学園に登校した。


 昨日の出来事が噂になっているかと思ったが、学内でその話題を口にしている者は見当たらない。

 王立騎士団の一隊がほぼ全滅したというのに……。


 なんらかの情報統制でも敷かれているのか。

『殺戮の宴』が国の重鎮とつながっているなら、あり得る話だ。

 と、


「あ、あなたは……っ!」


 廊下の前方から歩いてきた女子生徒が俺を呆然と見つめた。


「──君は」


 金色のロングヘアに青いリボンの美少女。


 制服姿のジークリンデだ。

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