18 破砕VS蛇鬼2

「虚勢を張るな。勝ち目がないことくらい理解しているのだろう?」


 ザハトがあごをしゃくった。


「『死を振り撒く神の槌ヴェルザーレ』か。どうやらそれはクラスS神器のようだな。神の名を冠した究極の神器の一つ──」


 謳うように告げるザハト。


「だが、戦いは神器のクラスだけで決まるわけではない。要は──特性の使い方と神器同士の相性だ。それによっては格上の神器を持つ者に勝利することもできる。実際、私はクラスS神器の使い手に出会い、勝ったことがある」

「……そいつは大したものだ」


 神器の相性や戦術、か。

 そこに関しては、まだ神器を手に入れて日が浅い俺よりも、ザハトに分がありそうだ。


「もう一度言うぞ。未来が見える私に、敗北はない」


 ザハトが朗々と宣言した。


「どうだ、命乞いをしてみろ。跪き、私のブーツを舐めて、みじめに命乞いをしてみせろ。あるいは私のモノをしゃぶってみるか? 私はどちらでもいける口でね。紳士としてのたしなみさ」


 ……どこが紳士のたしなみだ。


「絶対的な強者が屈服する姿は、私の興奮を高ぶらせてくれるのだ。女や男との交わりよりも、はるかにね……すでに私の股間はいきり立っているよ、ふふふふ」

「下品な奴だ」


 俺はため息をついた。


「どのみち、俺が命乞いをすることはない。お前に敗北することもな。なぜなら、お前が見えるのは──せいぜい数秒先の未来だろう?」


 俺はザハトを静かに見据えた。


 それは、完全な確信じゃなかった。

 俺の推測も多分に混じっている。


 だから、これは半ば鎌かけだ。


「……何?」


 奴の顔がわずかにこわばった。


「もし、もっと先の未来まで見通せるなら、あるいは俺も危なかったかもしれない。だがお前が見えるのは、今も言ったとおり数秒先まで。だから、俺が『初撃をしのいだ後』に追撃してこないんだ」


 ザハトの返答はなかった。

 図星のようだ。


 意外に素直な反応をする奴である。


「……だが、それでも私に未来が見えることに変わりはない。君の勝利はあり得ないこともな──」

「なら、その未来ごと破壊する」


 俺はヴェルザーレを掲げた。


 奴とのやり取りの間に、準備は終わっていた。




充填完了フルチャージ

殲滅力場放出ブラストフィールド・ファイア

『有効範囲内の敵対神器特性効果を破壊します』




 刹那、蛇型神器の百眼がまとめて爆発した。


 ヴェルザーレの第二特性によって、奴の神器の特性を破壊したのだ。

 チャージ時間の三分は今までの攻防や会話によって稼がせてもらった。


「馬鹿な!? 未来が見えない──」


 愕然とうめくザハト。


 未来を読み続けていれば、あるいはこれから逃れる方法があったのかもしれない。


 だが、俺との会話に気を取られて、未来を常にチェックするのを怠ったか。

 あるいはそこまで連続稼働はできないのか。


 どちらにせよ──これで奴の未来視は封じた。


「残念だったな、殺人者」


 俺はヴェルザーレを振りかぶった。


「俺の『死を振り撒く神の槌ヴェルザーレ』はすべてを壊し、すべてを殺す──」


 ザハトの顔が恐怖でひきつった。


「ま、待……」

「命乞いをしたところで無駄だし、聞くつもりもない。お前のように、それを聞いて興奮する趣味もな──」


 俺は静かに神の槌を振り下ろす。

 ザハトは悲鳴すら上げられず、全身を粉砕されて死んだ。


「これで十七人。全滅だな」


 俺は小さく息をつく。


『スコア25000に到達しました』

『神器No.5の解放条件をクリアしました』


 ふいに、声が聞こえた──。



※ ※ ※


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