16 正義の殺戮
俺は殺戮を開始した。
『審判の魔眼』で
まず一番近い場所にいたのは、平凡な容貌の中年女だった。
とても殺人者には見えない、ごく穏やかな雰囲気の女。
だが、その裏でこいつは男に取り入っては毒殺して金を奪うということを繰り返していた。
「ひ、ひいっ、助け──」
「死ね」
おびえた顔で逃げようとする彼女を、俺は一撃で叩き潰した。
「これで七人。次だ」
さらに数百メートル進み、次の標的を発見する。
今度は俺よりもさらに年下の少年だった。
右手にナイフを構え、左手には魔力の輝きを宿している。
武器と魔法の両方を扱うタイプか。
だが、関係はない。
物理も魔法も、まとめて粉砕するだけだ。
このヴェルザーレで。
「が、ぎゃぁっ!」
少年が放った火球を不可視の力で吹き散らし、そのまま振り下ろした槌が、少年の体をナイフごと潰した。
「八人。次──」
隻眼の中年戦士。
妖艶な美女の精霊使い。
好々爺然とした魔法使い。
俺は、見つけた端から『
そして、
「お前で最後だな」
十六人を殺し終えた俺は、いよいよ最後の一人を追い詰めた。
噴水がある公園。
周囲には人けがないようだが──。
戦いが長引けば、誰かに見つかる危険性があった。
いくら『認識疎外の指輪』があるとはいえ、できるだけ目撃者はゼロにしたい。
「皆の生命反応が次々に消えたのは君の仕業か。この短期間に……」
男がうなった。
シルクハットにタキシードを着た中年紳士といった雰囲気。
こいつも当然殺人者だ。
娼婦ばかりを狙い、今までに三十五人も殺していた。
「お前たちだってゲーム感覚だったんだろう? 俺を殺すためにわざわざ散開して……各個撃破ができて、俺としては楽だったな」
「我らは戦士ではない、殺戮者。殺しを楽しむために仕掛けたゲームだ」
男が俺を見据えた。
この期に及んで、奴の口元には薄笑いが浮かんでいる。
楽しいのか。
自分が殺されるかもしれない、この局面でも──。
殺し、殺される状況が楽しくてたまらないのか。
「なら、お前を殺してゲームエンドといこう」
「『お前』ではない。私の名はザハトだ。『殺戮の宴』のまとめ役をしている」
要は、リーダー格か。
とはいえ、すでに『殺戮の宴』はこいつを残して全滅している。
まとめるべきメンバーは、もはやいない。
「……ただではやられんぞ」
ザハトは険しい表情でナイフを抜いた。
「私とてクラスA神器の使い手だ。そう簡単にはいかん──」
なるほど、こいつもラーミラと同じ神器使いか。
だが、関係ない。
俺はただ、悪を叩き潰すだけだ。
どんな力を持っていようと、関係なく──。
容赦なく、完膚なきまでに──潰すだけだ。
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