14 喜び

「──なるほど。そういうことか」


 俺は突進し、あっという間にラーミラの目の前まで距離を詰めた。

 彼我の身体能力差を考えれば、これでもう逃がすことはないだろう。


「詰みだ。ラーミラ」


 俺はすでに理解していた。

 ヴェルザーレの第二の特性を。


 それは──有効範囲内で展開された敵対者の神器の特性効果を破壊すること。

 特性無効化とほぼ同義の能力だ。


 ただし、その能力を使うためには、どうやら三分間の溜めチャージが必要なようだが。


「くっ……」


 おびえた顔で後ずさる少女。

 背を向けて逃げ出すが、俺は素早くその前に回りこんだ。


「ま、待って、助けて!」


 ラーミラがその場にへたりこみ、叫んだ。

 さっきまでの余裕は、もうない。


「あ、あの、なんでも言うことを聞きますから! お金でも、えっと、あたしの体をお望みなら、どうぞ好きなだけ抱いてください! こう見えても、男の人を喜ばせるテクニックには自信があるんですよ? 口でも前の穴でも後ろの穴でも好きな場所であなたにご奉仕いたしますから……!」

「一つだけ、お前の言っていることは正しい」


 俺は命乞いを無視し、ヴェルザーレを振り上げた。


「さっき言っていたな、『俺は殺しに喜びを覚えている』と。確かに、そうだ。これほどの快感は、今までの人生では味わったことがない」

「あ、あなたは──」


 ラーミラが蒼白な顔で震える。


「あたしたちとは、違う……!? もっと……深い、闇を……!?」

「お前たち悪人を殺すことが──何よりも嬉しいんだ」


 宣言した俺の顔は、おそらく満面の笑顔だったろう。


 父さん。

 母さん。

 姉さん。


 俺は『正義の味方』として、悪を殺し続ける。

 もう少ししたら、みんなの仇も取りに行くよ。


「ただ、とりあえず今は──こいつらを殲滅する」


 俺は静かに、神の槌を振り下ろした。


 ぐちゃり、と音がして、ラーミラは単なる肉と血と骨の塊に変わった。




「──罪の値スコアがあちこちに表示されているな」


 いずれも数百メートルから二キロ程度の距離に点在している。


 数は全部で十一。

 俺はここまで六人の殺人者──ラーミラが言うところの『殺戮の宴キリングパーティ』のメンバーを殺している。

 事前に計測していた殺人者たちの数が十七だから、その残りということか。


 もしかしたら、今まではラーミラの魔眼の力で計測できなくなっていたのかもしれないな。


「よし、残りを始末しに行くか」


 俺はさっそく歩き出そうとする。


「ま、待って!」


 ジークリンデに呼び止められた。



※ ※ ※


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