13 第二特性、解放

『「死を振り撒く神の槌ヴェルザーレ」の第二特性を解放できます』

『解放しますか?』



「第二の特性、だと……!?」


 神器からの声に、俺は戸惑った。


 死の女神ヴェルナから授かったクラスS神器──『死を振り撒く神の槌ヴェルザーレ』。

 ヴェルナはこれを『すべてを砕き、すべてを殺す──神の槌』と表現していた。


 その特性はハンマーの打突部から『不可視の破壊エネルギーを放つ』こと。

 調べたところでは、このエネルギーは打突部からおおむね数十センチ程度の範囲まで届く。


 つまり中距離や遠距離に使用できる特性ではない、ということだ。

 あくまでも打撃の際に、その破壊力を激増させることを主目的とした特性なんだろう。


 実際、ヴェルザーレの破壊力はすさまじい。

 触れるものすべてを砕き、あらゆる者を一撃で殺す。


 だが──それ以外にも別の特性が存在したのか。


「第二特性の内容はなんだ?」


 俺はラーミラの攻撃に備え、周囲に気を配りながらたずねた。


『第二の特性は……です。そのために……が必要です』


「えっ?」


 肝心の内容が聞こえない。


「もう一度聞く。第二の特性の内容は?」

『第二の特性は……です。そのために……が必要です』


 重ねて質問したが、結果は同じだった。


 なぜか、説明部分になると声が小さくなったり、妙な雑音が入って聞こえないのだ。


「何をボーっとしているのかな?」


 ラーミラの笑い声が聞こえた。

 まだ近くにいるようだ。


 彼女の魔眼の力で、俺にはその姿が見えないが──。


「神器でアップさせたあなたの運動能力は確かにすさまじい。だけど、攻撃を続ければ──いずれは集中力が切れるときが来る」


 ふたたび矢が飛んできた。

 ヴェルザーレの『力』で吹き飛ばす俺。


「……飛び道具では俺は殺せないぞ。直接斬りかかったらどうだ?」

「ふふ、挑発には乗らないよ。刃があなたの肌に触れた瞬間、超反応であたしを捕まえるつもりでしょ? あなたにはそれだけの反応速度がある──」


 ラーミラは意外に冷静だった。


「一定距離内に近づかなければ、あたしがあなたに捉えられることはない。安全圏から延々と攻撃して、あなたの集中が切れるのをじっくり待つとするよ。これで詰みだね、美少年くん」




殲滅力場充填開始チャージスタート

『カウント180……179……178……』




 神器からいきなり声が聞こえた。


 カウントは一秒ごとに減っているようだ。

 つまり──残り三分か。


 それで『チャージ』とやらが終わるのか?

 だとすれば──。


「ほらほら、ボーっとしてると死んじゃうよ?」


 また矢が飛んできた。

 なんなく吹き飛ばし、俺は引き続き周囲を警戒。


『チャージ』が終わったら、何が起きるのか。


 分からないまま、カウントは残り二分になり、一分になり──。


「さあ、またいくよ」


 矢が飛んでくる。

 吹き飛ばす。


 二十秒ほどして、また矢が放たれる。

 吹き飛ばす──。




充填完了フルチャージ

殲滅力場放出ブラストフィールド・ファイア

『有効範囲内の敵対神器特性効果を破壊します』




 ……これは!?


「えっ、何……!?」


 聞こえたのは、ラーミラの戸惑いの声。


「見える……!」


 俺はハッと目を見開いた。


 二十メートルほど前方に銀髪の美少女が立っていた。

 さっきまで、まったく姿が見えなかったというのに。


「認識を改変できない……? なぜ、魔眼が作用しないの──」




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