12 破砕VS魔眼2

 俺は放り捨てたヴェルザーレを拾うと、地を蹴り、追撃した。

 地面に叩きつけられ、立ち上がろうとする青年剣士に、


「終わりだ」


 ヴェルザーレを叩きこむ。

 ぐちゃり、と頭蓋を砕き、即死させた。


 続いて、ドワーフだ。


「ひ、ひいっ……」


 恐怖の表情を浮かべた老戦士をヴェルザーレで叩き潰した。


 これで、ディジンやさっきの男たちと合わせて五人。


「残り十二人か」


 俺は周囲を見回した。


 今の二人以外にも、ラーミラと連携して戦う殺人者がいるんだろうか。

 それとも、今のでとりあえずは終了なのか。


「……身体能力アップ系の神器なのは予想してたけど、そこまでデタラメに強くなるなんて」


 ラーミラの声には呆れが混じっていた。


「今の二人は、一流の使い手なんだよ? 傭兵でいえば、第一等級クラスワンに匹敵するレベル。あなたの強さは、ちょっとおかしいね」


 傭兵──戦争の助っ人から、魔物退治や要人の護衛など、様々な荒事を専門にする者たちだ。

 その強さや実績などによってランク分けが為されている。


 超越等級オーバークラスと呼ばれるわずかな数の例外を除けば、第一等級は最強レベルの傭兵といっていい。


 それでも『死神の黒衣』をまとった俺の敵じゃなかった。


「今さら怖気づいたか?」


 だが、こいつらを一人たりとも逃すつもりはない。

 放っておけば、これから先も己の快楽のためだけに罪なき人を殺し続ける下種どもだ。


 だから、俺がこの場で狩り尽くす──。


「後はお前だ、ラーミラ」

「あたしは殺されたくないなぁ……あ、エッチなことしてあげるから見逃してくれない?」


 言いながら、ラーミラはいきなりワンピースの胸元をはだけた。

 小ぶりだが形のよい乳房があらわになる。


 ふざけているのか、それとも色仕掛けのつもりか。


「ほら、見とれたでしょ?」

「……!?」


 いつの間にか、ラーミラがすぐ目の前にいる。

 キスをしそうなほど間近に、彼女の美貌があった。


「お前──!」


 慌ててヴェルザーレを振るう。


 が、彼女の姿は煙のように消え失せた。


「当たらないよ?」


 今度は側方に移動していた。

 俺を見つめるラーミラの右目が緑の輝きを称えている。


『幻惑の魔眼』の力か。


「分かった? 逃げようと思えば、逃げられるんだよ。あたし」


 笑うラーミラ。


「おっぱい見せてあげたんだから、許してよー。ねえねえ」

「……ふざけるな」


 認識を攪乱しようと、どんな特性を使おうと。


 絶対に逃がさない。

 悪はすべて殺す──。




『神器所持者の習熟度1→2に上がりました』

『「死を振り撒く神の槌ヴェルザーレ」の第二特性を解放できます』

『解放しますか?』




 声が、突然響した。


「第二……特性?」


 俺は眉を寄せた。


 よく分からないが、ヴェルザーレには不可視の『力』を放つ他に、まだ特性があるということか──?





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