10 神器使い

「一つだけだけどね。あなたみたいに複数持っている人は初めて見た」


 笑うラーミラ。


「あたしの『認識改変』もこれくらいの距離まで近づくと無効化されちゃうみたいだし、あなたってかなり高クラスの神器を持ってるでしょ? 最低でもクラスAが一つ。もしかしたら神話級とも言われるクラスSも……?」

「敵に教える義理はない」


 俺はぴしゃりと言った。


「つれないね。仲間たちをあっさり殺した相手に、こっちは復讐もせず友好的に話に来たのに」


 と、ラーミラ。


「ディジンは乱暴だけど純粋だったし、レグ兄弟だって明るい性格で話していて楽しかったんだよ? みんな、あなたが容赦なく殺した」


 ディジンは人狼がそう名乗っていたから分かるが、レグ兄弟というのはさっき殺した双子らしき男たちのことだろう。


「悲しいね」


 ラーミラの瞳に涙が浮かぶ。


「お前のような神器使いは他にも大勢いるのか?」


 俺は取り合わずにたずねた。


「敵に教える義理はないね」


 皮肉げに笑うラーミラ。

 確かに、それはそうだな。


「──と言いたいところだけど、あなたは敵じゃなくなるかもしれないから教えてあげる」


 ん?


「いえ、希少な存在だと思う。だからこそ『あの方』も我らを重宝してくださる。とっておきの暗殺部隊として──」

「えっ?」

「あたしたちが野放しになっている理由……国の治安機構が腐敗しているからだと思った? それだけが原因だと?」


 まさか、こいつ──いや、こいつらは。


「国の重鎮のお抱え部隊……!?」


 背後でジークリンデが愕然とした声をもらした。


「王立騎士団の女の子にはショックかな? でもね、この国はあなたが思っている以上に、闇に染まっているんだよ?」


 ラーミラがぱちんと流し目を送る。

 それから俺に視線を戻し、


「あなたには素質がある。よかったら、あたしたちの側に来ない?」


 と、手を差し出した。


「お前たちの組織に入れっていうのか」

「組織じゃない。あたしたちは同好の士の集まり、といったところ。単なるお友だち集団だね」


 ふふっ、と笑うラーミラ。


「その名を『殺戮の宴キリングパーティ』。入会資格はたった一つ。殺しが何よりも好きであり、殺しにいっさいの躊躇をしないこと」


 ラーミラが語った。


「あなたはその資格を満たしている」

「ふざけるな」


 確かに悪人を殺すことに躊躇はしない。

 だが、殺しが好きなわけじゃない。


「そうかな?」


 俺の内心を読んだかのように、ラーミラが言った。


「人を殺すとき──あなたは喜びを感じている。快感を覚えている。意識しているか、それとも無自覚かは分からないけれど」


 俺が……人を殺すことを喜んでいる?


「だとしたら──どうする?」


 俺はヴェルザーレを召喚した。


「殺しに対する感情なんてどうでもいい。俺は俺の為すべきことを為す」

「為すべきこと?」

「悪を殺す」


 ヴェルザーレを掲げ、告げる。


「今ここで、お前を殺す──」

「残念。お友だちには、なれないか。だけど──」


 ラーミラの右の瞳が、緑の輝きを放った。


「こっちにだって神器があるんだ。そう簡単にはいかないよ」



※ ※ ※


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