5 揺らぐ正義

「後はお前だけだなぁ」

「可愛いお嬢ちゃん。その可愛いお顔を切り刻んでやろうか?」

「いや、慰み者にして、たっぷり屈辱を味わわせてからのほうがいいな」

「そいつはいい。まずは俺たちで穴という穴を犯してやろうぜ」


 楽しげな男たちの声。


「うう……」


 ジークリンデは全身を震わせた。


 学園ランク一位とはいえ、それはあくまでも学内の模擬戦での話。

 こうした実戦経験には乏しい。


 まさかいきなり味方が全滅させられるとは想像もしていなかった。

 悪の犯罪者集団など、正義の騎士である自分たちが力を持って制圧し、捕縛する──。


 それしか考えていなかった。


 怖かった。

 震えが止まらないほどに。


(誰か……)


 泣き出しそうだ。


 股の部分が熱くなった。

 太ももの内側をぬるい何かが伝う。


 恐怖で失禁してしまったことに気づいた。


「助けて──」


 ジークリンデは悲痛な思いで叫ぶ。


「助けてほしいなら、俺たちに体を差し出しな」

「装備を外して、服も全部脱げ」

「たっぷり楽しませてくれるんなら、見逃してやるぜ?」

「それとも騎士らしく、誇り高く戦って死ぬか?」

「お前が、選べ」


 最後に男たちの声が唱和した。


「私は──」


 正義の騎士だ。


 無惨に殺された仲間たちのためにも、誇りを持って戦う。

 命を懸けて戦う──。


「──なんて、できるわけない! 嫌よ、死にたくないぃぃぃぃっ!」


 ジークリンデは絶叫した。

 そして、半ば無意識に鎧の留め金を外していた。


 大慌てで装備をすべて外す。


「ほう? いい子だな」

「次は服も脱ぐんだ。生まれたままの姿を俺たちにさらせ」


 言葉とともに、暗がりの向こうから二つのシルエットが現れた。

 でっぷりと太った中年男の二人組。


 そっくりな容姿をしているところから、おそらくは双子だろう。


「楽しもうぜ、お互いにな……へへへ」


 二人の股間は大きく膨らんでいた。


「そら、俺たちを気持ちよーくさせるんだ?」

「俺たちを満足させたら、命だけは許してやるぜ?」

「何をやればいいか……分かるよな?」

「え、えっと……」


 ジークリンデは恐怖に青ざめたまま、立ち尽くしていた。


 性的な経験がいっさいない彼女だが、男女のことについて、ある程度の知識は持っていた。

 そのほとんどは早熟な同級生から聞かされたものだが──。


「そら、まずは口でしてもらおうか」

「へへへ、初心そうな女だ。俺たちが一から教えてやるからなぁ」


 男たちは笑いながら下半身を丸出しにした。


「わ、分かりました……」


 ジークリンデは死にたくない一心で、男たちの前に跪く。


(嫌……気持ち悪い……)


 屈辱だった。


 正義の騎士に憧れ、騎士学園に通っている自分が──薄汚い殺人鬼たちの足下に跪き、娼婦のような真似をさせられようとしている……。

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