12 会合、そして幕開け

 SIDE ???


 暗い室内に、人影が揺らめく。

 数は全部で十七。


 隻眼の中年男。

 妖艶な若い美女。

 好々爺然とした老人。

 猛々しい獣人の青年。


 年齢も性別も、種族すらもバラバラの十七人である。


 彼らの共通点は、一つ。

『殺し』を何よりも愛好し、『殺し』に何よりも喜びを覚えるという点だけ。


 快楽殺人者の集まり──。


 彼らは、自らを『殺戮の宴キリングパーティ』と呼んでいた。


「『血まみれブラッディダール』が殺された……」


 誰かが小さくうめいた。

 他の者たちがざわめく。


「ほう。あいつは切断魔法を操る一流の戦闘魔導師だったはずだが……あの町にそんな凄腕の騎士がいたか?」

「あるいは流れの傭兵の仕業か?」

「分からん……だが、その町では立て続けに殺人が起きている。しかも、いずれも犯罪者ばかり──」

「全員が頭部、あるいは体のどこかを超重武器で潰され、絶命している。凶器が共通しているようだ」

「同一犯か、それとも──」

「あたしたちを狙っている者がいるのかしら? 命知らずねぇ」


 彼らの会話は弾む。

 未知の獲物に対する、興味と喜びで。


「上等だ。ワシが殺してやろう。真綿で首を絞めるようにじわじわと……ふひひ」

「まあ、待てよ。俺だって殺してーんだ。面白そうな獲物じゃねーの」

「横取りしないでよ。僕だって興味があるよ……じゅるり」


 誰もが、殺意をみなぎらせていた。


 彼らの瞳には、いちように喜悦の光がある。

 殺人という行為に対する悦楽の輝きが──。


「全員、気を抜かないように」


 リーダー格の男が注意した。


「私の『探知』に──かすかに引っかかった。もしかしたら犯人は『神器使い』かもしれない」


 神器。


 それは神がなんらかの試練と引き換えに、あるいはまったく気まぐれに──人間に授ける天界の武具や道具だ。

 最高ランクのSから最低のDまで、その能力や威力、希少性などによって五段階に格付けされている。


 彼らはいずれも一流の殺傷能力を持つ殺人者だが、相手が『神器使い』となれば、簡単に殺せる相手ではないだろう。

 むしろ返り討ちに遭う可能性も十分にある。


 だが──だからこそ、面白い。


 だからこそ、殺し甲斐がある。


「で、どうするんだ? 方針は」


 誰かがたずねた。


「無論、早い者勝ちだ」

「そうこなくちゃな」

「当然」


 全員が楽しげな笑みを浮かべる。


 そいつを最初に見つけ出し、殺すのは自分だ──。

 誰の目にも、自信と欲望の光があふれていた。




 かくして──『正義の味方』と『殺戮者』たちの戦いが、幕を開ける。



※ ※ ※


次回から第2章になります。ここまで読んでいただきありがとうございました!

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