女神から13個のチート神器をもらった俺は、最強の【殺傷能力】【身体能力】【感知能力】で悪を駆逐する

六志麻あさ@12シリーズ書籍化

第1章 苛烈な正義

1 正義の味方

「父さん! 母さん! 目を開けてよ! 死なないで! うわぁぁぁぁぁぁんっ!」


 血まみれで倒れている両親を前に、幼い俺──ミゼル・バレッタは泣きじゃくった。


 ──後で知ったことだが、小さな酒場を経営していた俺の両親は、町を牛耳る犯罪グループとささいなことでトラブルになったらしい。

 それは次第にエスカレートし、やがて何かのきっかけで爆発し──。


 父さんも母さんも、いたぶり殺された。


「大丈夫よ、ミゼル。あたしが父さんと母さんの仇を討つから」


 泣きじゃくる俺に、姉さんが言った。

 姉さん自身も泣きながら、それでも強い口調で宣言した。


「あいつらを一人残らず捕まえる。罪を償わせる。絶対に許せないから──」


 その目的を叶えるために、姉さんは王立騎士学園に入学した。

 成績優秀で、学年ランクはトップだった。


 そして数年後──思い出したくもない事件が起きた。


 思い出すだけで、胸の芯がえぐられるように痛む。


 両親を殺したグループに単独潜入捜査をしていた姉さんは……遺体になって発見された。


 遺体には無数の男たちから暴行された跡が生々しく残っていた。

 その表情は恐怖と屈辱に歪んでいたということだった。


 姉さんは奴らを告発するつもりだったんだろう。

 ある程度の証拠をつかんでいたらしく、やがて奴らは捕縛された。


 ──だけど、ワイロを使ってあっさり釈放された。

 そいつらのバックに領主がいたことが大きな理由だろう。


 彼らはその後も町でのうのうと暮らしている。


 一方の俺は追われるように町を出た。

 両親や姉さんが遺してくれた金があり、近隣の町でどうにか暮らすことができた。


 さらに数年。

 俺は十六歳になり、王立騎士学校に入ることができた。

 姉さんと同じ学校だ。


 ここを出て、将来は騎士として悪人を取り締まる部署に行くんだ。

 そして父さんや母さん、姉さんを殺した連中を捕まえる。

 あの悪党どもに、罪の報いを受けさせる。


 何年かかろうとも──いや、一生かかっても必ず。




 それから一年が経った。


 俺は王立騎士学園の二年生に進級していた。

 情けないことに、成績は下から数えたほうが早い──というか、はっきり言って落ちこぼれだ。


「はあ……いつか強くなれるのかな、俺は」


 今のままじゃ、王立騎士の採用試験に受かるのは夢のまた夢だ。


 すべての悪を討つ、正義の騎士。


 正義の、味方。


 子どもっぽい願望だとしても、やっぱり俺はそれを目指したかった。

 そのための力を得たかった。


 実質的に野放し状態になっている、多くの犯罪者を討てるような──。


 もちろん、相手が犯罪者といっても、それを殺してしまえば、俺も法で裁かれる。

 悪人相手なら殺してもOK……などというのは、この国の法律が許してくれない。


「じゃあ、せめて犯罪者に正当な裁きを下してほしいよ」


 ワイロさえ積めば簡単に放免されてしまうような、腐敗した社会。

 腐敗した司法、行政。


 ──などと、社会を嘆いていると、


「へへへ……綺麗な顔してるじゃねぇか。男とは思えねぇな」


 声が、した。


 暗がりに立っていたのは、痩せぎすの男。

 月明かりに照らされた顔は、嗜虐的な笑みを浮かべていた。


「お前は──」


 俺はハッと顔をこわばらせた。


血まみれブラッディダール』。

 最近、町で話題になっている通り魔である。


 被害者を切断魔法で切り刻み、その二つ名の通り血まみれにして殺す──。

 残虐極まりない、快楽殺人者。


「くっ……」


 思わず後ずさる俺。


 周囲に人の気配はない。

 助けを求めても無駄だろう。


 かといって、正面から立ち向かっても俺に敵う相手とは思えない。


 どうする──。

 恐怖と焦りで、思考が混乱する。


「そこまでだ!」


 凛とした声とともに、誰かが駆け寄ってきた。

 黒髪を長く伸ばしたクール系の美少女──騎士学園のランキング上位にいる彼女のことは、俺も知っていた。

 ターニャ・ミルバ先輩だ。


「最近、この近くに不審者が出るって聞いていたからな。見回っていたんだ」


 ターニャ先輩が言った。


「ミゼル、君は逃げろ。こいつは私が対処する」


 腰の剣を抜き、構える。


「犯罪者は私が捕える」


 王立騎士学園の学年ランク上位は、正式な騎士に準ずる権限が与えられていた。

 頼もしい姿だった。


 どくん、と心臓の鼓動が高鳴る。


 俺も、こんなふうになりたい──。

 犯罪者に敢然と立ち向かい、捕まえるような『正義の味方』に。


「俺も、手伝います」

「ミゼル……?」

「俺だって、騎士を目指していますから……!」


 言いながら、声が震えるのを抑えられなかった。


 やはり、怖いものは怖い。


 だけど、逃げてたまるか。

 ここで臆していたら、いつまでたっても弱いままだ。








***

〇『死亡ルート確定の悪役貴族に転生した俺、ゲームでは【努力しない超天才魔術師】という設定だけど、めちゃくちゃ努力したら主人公を瞬殺できるくらい強くなったので、生き残れそうです。』

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