女神から13個のチート神器をもらった俺は、最強の【殺傷能力】【身体能力】【感知能力】で悪を駆逐する

六志麻あさ@11シリーズ書籍化

第1章 苛烈な正義

1 正義の味方

「父さん! 母さん! 目を開けてよ! 死なないで! うわぁぁぁぁぁぁんっ!」


 血まみれで倒れている両親を前に、幼い俺──ミゼル・バレッタは泣きじゃくった。


 ──後で知ったことだが、小さな酒場を経営していた俺の両親は、町を牛耳る犯罪グループとささいなことでトラブルになったらしい。

 それは次第にエスカレートし、やがて何かのきっかけで爆発し──。


 父さんも母さんも、いたぶり殺された。


「大丈夫よ、ミゼル。あたしが父さんと母さんの仇を討つから」


 泣きじゃくる俺に、姉さんが言った。

 姉さん自身も泣きながら、それでも強い口調で宣言した。


「あいつらを一人残らず捕まえる。罪を償わせる。絶対に許せないから──」


 その目的を叶えるために、姉さんは王立騎士学園に入学した。

 成績優秀で、学年ランクはトップだった。


 そして数年後──思い出したくもない事件が起きた。


 思い出すだけで、胸の芯がえぐられるように痛む。


 両親を殺したグループに単独潜入捜査をしていた姉さんは……遺体になって発見された。


 遺体には無数の男たちから暴行された跡が生々しく残っていた。

 その表情は恐怖と屈辱に歪んでいたということだった。


 姉さんは奴らを告発するつもりだったんだろう。

 ある程度の証拠をつかんでいたらしく、やがて奴らは捕縛された。


 ──だけど、ワイロを使ってあっさり釈放された。

 そいつらのバックに領主がいたことが大きな理由だろう。


 彼らはその後も町でのうのうと暮らしている。


 一方の俺は追われるように町を出た。

 両親や姉さんが遺してくれた金があり、近隣の町でどうにか暮らすことができた。


 さらに数年。

 俺は十六歳になり、王立騎士学校に入ることができた。

 姉さんと同じ学校だ。


 ここを出て、将来は騎士として悪人を取り締まる部署に行くんだ。

 そして父さんや母さん、姉さんを殺した連中を捕まえる。

 あの悪党どもに、罪の報いを受けさせる。


 何年かかろうとも──いや、一生かかっても必ず。




 それから一年が経った。


 俺は王立騎士学園の二年生に進級していた。

 情けないことに、成績は下から数えたほうが早い──というか、はっきり言って落ちこぼれだ。


「はあ……いつか強くなれるのかな、俺は」


 今のままじゃ、王立騎士の採用試験に受かるのは夢のまた夢だ。


 すべての悪を討つ、正義の騎士。


 正義の、味方。


 子どもっぽい願望だとしても、やっぱり俺はそれを目指したかった。

 そのための力を得たかった。


 実質的に野放し状態になっている、多くの犯罪者を討てるような──。


 もちろん、相手が犯罪者といっても、それを殺してしまえば、俺も法で裁かれる。

 悪人相手なら殺してもOK……などというのは、この国の法律が許してくれない。


「じゃあ、せめて犯罪者に正当な裁きを下してほしいよ」


 ワイロさえ積めば簡単に放免されてしまうような、腐敗した社会。

 腐敗した司法、行政。


 ──などと、社会を嘆いていると、


「へへへ……綺麗な顔してるじゃねぇか。男とは思えねぇな」


 声が、した。


 暗がりに立っていたのは、痩せぎすの男。

 月明かりに照らされた顔は、嗜虐的な笑みを浮かべていた。


「お前は──」


 俺はハッと顔をこわばらせた。


血まみれブラッディダール』。

 最近、町で話題になっている通り魔である。


 被害者を切断魔法で切り刻み、その二つ名の通り血まみれにして殺す──。

 残虐極まりない、快楽殺人者。


「くっ……」


 思わず後ずさる俺。


 周囲に人の気配はない。

 助けを求めても無駄だろう。


 かといって、正面から立ち向かっても俺に敵う相手とは思えない。


 どうする──。

 恐怖と焦りで、思考が混乱する。


「そこまでだ!」


 凛とした声とともに、誰かが駆け寄ってきた。

 黒髪を長く伸ばしたクール系の美少女──騎士学園のランキング上位にいる彼女のことは、俺も知っていた。

 ターニャ・ミルバ先輩だ。


「最近、この近くに不審者が出るって聞いていたからな。見回っていたんだ」


 ターニャ先輩が言った。


「ミゼル、君は逃げろ。こいつは私が対処する」


 腰の剣を抜き、構える。


「犯罪者は私が捕える」


 王立騎士学園の学年ランク上位は、正式な騎士に準ずる権限が与えられていた。

 頼もしい姿だった。


 どくん、と心臓の鼓動が高鳴る。


 俺も、こんなふうになりたい──。

 犯罪者に敢然と立ち向かい、捕まえるような『正義の味方』に。


「俺も、手伝います」

「ミゼル……?」

「俺だって、騎士を目指していますから……!」


 言いながら、声が震えるのを抑えられなかった。


 やはり、怖いものは怖い。


 だけど、逃げてたまるか。

 ここで臆していたら、いつまでたっても弱いままだ。








***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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