第659話 世界が気づいた
あまりにも乱暴に、無慈悲に、唐突に降り注ぐソレに、ソルジャは一瞬呆然とした。
「な、なんだ、アレは! 砲弾!?」
「こちらに向かってきておる!」
「向かう、どころか……デ、デカいッ!? まさか、い、隕石!?」
「なんだ、これは! ま、まさか、魔法だとでも……」
「陛下ッ! お逃げ――――」
空の彼方から真っすぐ宮殿……いや、帝都そのものに堕ちようとしているソレに皆が気づいた。
空気が変わり、圧縮と加熱で気温も何もかもが変わり、ソレが本物だと誰もが認識した。
「穿つぞ! 【愛槍・グングニルッポイノ】よ、我と共にッ!!!!」
次の瞬間、帝国の誰よりも真っ先に動いたのはソルジャだった。
その全身に力を籠め、勇者の槍の力を解放。
眩い閃光を放ち空へと跳躍した。
「我に続け! 砲撃をアレに! 同時に砕けた破片も帝都に堕とすな! アレが堕ちたら……帝都は消滅するッ!!」
不意打ちで国が消滅する。
そんな非道なことはかつての戦争でも存在しなかった。
そのことからもソルジャは「ハクキではないナニカ」を感じ取るも、ソレを深く追求している場合ではなく、ただ落下してくる月の破片に向かって飛んだ。
「我は勇者にして、皇帝なり! たとえ勇者一人になろうとも、堕とすものか! 死なせるものか! 民をッ!!!!」
ソルジャの魔力を得て、槍を纏う光が膨張し、渾身を込めた勇者の突きが月の破片を討つ。
「ロイヤルソルジャーッッ!!!!!」
落下してくる月の破片。その規格外のデカさと威力に向かい、己の最強最大技を繰り出して討つソルジャ。
「堕とすものか! 守る! この命がどうなろうとも、何があろうとも! 民は必ず――――」
その伝説の勇者の渾身の一撃に、落下するだけだった月の破片の速度が弱まる。
それでも完全に防ぎきれるわけではない。
だが、
「陛下ぁぁああ!!!!」
「あの隕石を……す、すごい、流石は陛下!」
「か、感心するな! 続け! 陛下に!」
「そうだ、陛下に……我らの勇者に続けッ!!」
誰よりも先頭を駆け抜ける勇者の感化された戦士たちも動く。
「緋剣、出るぞ!」
「「「「「応ッッッ!!!!」」」」」
王国最強の戦士たちが一斉に空に飛び、威力の弱まった月の破片を一斉に攻撃する。
「砕け、そして破片を一粒たりとも帝都に落とすな! その粒一つで、人が何人も死ぬと思え!」
「いまここで、我らが!」
「命を駆けよ!」
やがて、戦士たちの勇敢なる攻撃が、無慈悲な月の破片を破壊し、そしてその破片の全てを欠片も残さぬよう奔放し……
「アハ……すごーい、すごーい、人がせっかくこんなに力を使ったのに不発とか……すごくて萎える……だから……」
そのとき、この一連の元凶である鬼が帝都の屋根の上に登ってガッカリ顔を見せたりはしゃいだりしながら手を叩き……
「もーいっかい! もーいっかい! おじさんたちの、ちょっといーとこ見て見たい~♪」
「「「「「「「ッッッ!!!!?????」」」」」」」
決死の思いで何とか月の落下を防いで、帝都を守れたと思いかけたソルジャや帝国戦士たちの希望を打ち砕くかのように、もう一つ月の破片が落下してきた。
「あ……悪夢だ……」
「う、うそだ……」
「も、もう一個……」
「ゆ、夢だろ……これ……」
勇者と戦士たちが全身全霊の力を込めて防ぎ切った月の破片が、もう一つ空から降ってきた。
あり得ぬ事態に力を使い切った戦士たちが震えて涙を浮かべる。
「あ、お、……おおおおおおおおおおお、諦めるなぁ! もう一度、やるぞ、き……気合と根性で正義を――――」
もはや軍略も減ったくれもない。
ソルジャはもはや根性論を叫ぶしかなかった。
(ヒイロ……どうか、お前のその脳筋戦法を少しでも……私に力を……一人でも多くの民を守るため…………―――――ッッ!!!!)
そして、月の破片そのものは砕かれる……ものの、分散して砕け散った巨大な破片の全てを砕くことはできず、砕け散った月の破片が次々と帝都全土を覆い尽くし、多くの建築物を容赦なく破壊し、全土を粉塵で包み込み、数え切れぬ悲鳴とともに、ディパーチャー帝国帝都は建国以来初となる壊滅的な被害が刻み込まれることとなった。
そんな、惨状が起こっていることを知らなかった世界。
しかし、そのことに世界がようやく異変に気付くことになる。
「な、なんだ?! 突然……」
「月が……これは一体、どういうことでしょう?」
「いま、月が……」
「……どういうことだ? 何が起こった」
そこはカクレテールにて、いつものように皆で集まって鑑賞会をしていた一同。
皆で凝視するように空を見ていたために、皆が気づいた。
月から何かが地上へ向かって落下したことを。
「ど、どういうことっすか? 今の月からっすか?」
「でも……映像が途切れた……」
「鑑賞会、どうなるの?」
そして、月の破片が地上へ落下した影響で、大きな異変を起こしたためか、アースの物語が途中で途切れてしまったのである。
鑑賞会の途中中断。
だが、それがいま世界の者たちが見た「月から破片が飛んで地上へ落ちた」という事象が見間違いではないということを理解した。
「不吉な……これも、アースが何かした……というわけではなかろな?」
この突然の出来事に妙な胸騒ぎが収まらず、フィアンセイは震えた。落ちた破片がどうなったのかが結局どうなったのかは分からない。
すると……
「どこの……バカタレじゃ……人がせっかく、心地よく胸躍る夢を見ていたというのに……」
「「「「「ッッッ!!??」」」」」
鑑賞会の途中で「寝る」と言って本当に寝ていたはずのバサラがその巨体を起こして呟いた。
そして同時に放たれる圧倒的な威圧感に、その場にいた誰もが腰を抜かしそうになるほど、バサラの全身から激しい怒りが溢れていた。
「し、師匠……あの、一体……」
「世威羅亜ムーン……ふざけおって……ふざけおって……たとえどれほどその身が命の危機に晒されようとも……それでも使わなかったのが、トレイナもカグヤも人も魔も関係なく抱いた美学……それを軽々しく使いおって……おまけに……月にあるかぐやの墓が汚れたではないか…………」
その一言一言に押しつぶされそうになるほどの迫力にフィアンセイたちは言葉を失ってただ震えて立つだけしかできない。
そして激しい怒りを抱いたバサラはその翼を開き……
「ワシこそが月に代わって仕置きしてくれようぞ……無能無知な愚か者がぁ……」
「なんなのじゃ…………わらわの声が届いたのか、本当に鑑賞が止まったのじゃ」
さらに……
「いえ、そういうわけではないわ……ノジャ。だ、だって……それ以前に……何か……月から……」
「なーんか、スゲー嫌な空気を感じ取ったじゃない?」
タピルバエルにてエルフたちと鑑賞会の真っ最中だったノジャやシノブたちも、途中で鑑賞が途切れたことと、月の破片が地上に落下していった出来事に「何が起こっているのか」と騒ぎ出した。
「ううむ……月の破片……とは……まさか……いや、そんなはずは……」
何が起こっているのか分からない中、ミカドは何か心当たりがあるような反応を見せるが、すぐに「そんなはずはない」と首を横に振る。
しかし……
「……月光眼……だったりして」
「ッ!? ぞ、族長殿……い、いや、しかし……そんなことが……」
こちらもまたいつになく真剣な表情で空をじっと見つめるエルフの族長がボソッと呟き、その言葉にミカドも全身を震わせた。
「あ? 月光眼とな? 何を言うとるのじゃ? そんなものが今になって……」
「月光眼って、三大魔眼よね……でも、なんでそんなものが…………ま、まさか、またハニーの身に何かが?! こういうとき、いつも――――」
族長の言葉やミカドの反応にノジャたちも驚き、そして言いようのない嫌な予感に襲われる。
世界で何かが起こっている。
すると……
「あら? ちょっと待って……お父さんから念話……」
そのとき、シノブの元に届く、父であるオウテイからの緊急連絡。
それにより、今、世界で何が起こっているのかをシノブたちも知る。
そう、このレンラクキの暴走が一つの合図となって、世界中がようやくこの事態を知ることとなった。
――あとがき――
暑いねぇ、マジで皆さん脱水症状に気をつけてくださいな。
『第660話 お仕置き(ネタバレ注意:禁断師弟でブレイクスルー・先行投稿)』
https://kakuyomu.jp/users/dk19860827/news/16818792438293546932
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おいでおいで、みなさんおいで!
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