第451話 ワールドカップ
「ヒイロ……アースのああいうところだけはあんたに似たのかもね……お酒に酔って脱いだりするところとか……大きい胸好きとか……」
「い、いや、待て! それは違うぞ! だいたい、俺がデカい胸好きだったら、エーのお前と結婚してな―――ぶほっ?!」
「ハクキの前でサイズ晒してんじゃないわよ!?」
「お、おま、今ガードできないんだから頭突きは……つうか、晒さなくてもお前の場合は見ただけで分か―――ほごっ!?」
「うるさーい!」
世界の果てで息子のあられもない姿を見せられている夫婦。
拘束されながら夫に頭突きするマアムに、ダメージ受けるヒイロ。
「……やれやれ……まぁ、息子も愉快な一面もあるということだな」
そんな夫婦喧嘩にため息のハクキだった。
――本件は全年齢対応となっております。不適切なものには「光規制」という修正を入れさせていただいておりますので、幼いお子さんにも安心して御覧になれます
パリピのナレーションと同時に、衝撃と笑劇は世界全土に同時に広がった。
酒を一口飲んで酔っ払い、服を脱ぎだしたアース。
そして、狼狽えているサディスに乳房を懇願。
そんなアースの姿に……
「~~~本当だったのか……」
「あっ、えっと……そのぉ……姫様……」
「アースが、は、裸になって腹筋カッコいい……じゃなくてだ……優勝したらオッパイの約束というのは……天空世界での話は本当だったのだな!」
目つきを血走らせながらサディスの両肩を掴んで捲し立てるフィアンセイ。
天空世界でアースと向き合い、互いの誤解について話し合った時、フィアンセイはアースが御前試合で優勝を目指していたのは、自分にプロポーズするためだと思っていたのだが……
――お前が優勝して手に入れたかったもの……我ではないとしたら何を!?
――そんなの! あの時の俺は優勝して、サディスのおっぱい……を……ッ!?
そう言われて口から魂が出たフィアンセイ。
そして、それが本当のことだったと改めて知らされ、フィアンセイは荒れた。
「……俺はそんな不純な動機で努力したアースに御前試合で……」
「は、はは、いや、でもリヴァルも姫様に許嫁にしてほしいとかって……それも不純と言えば……」
「…………」
御前試合やら闘技大会やらで大活躍したアース。そのアースが積み重ねてきた努力。それは全て初恋の人のオッパイのため。
いつしか世界では「さいて~」という女性やら、「ぎゃはは、それなら理由はよく分かる」と爆笑する者たちで分かれていた。
そんな中で、アースに想いを抱いている乙女たちは……
「しかし……そうか……アースはそこまで女性の乳房が好きだったのか……そうか……」
「……姫様?」
「ま、まぁ、わ、我とてアースが、ス、スケベに興味あるのは知っていたし、お、男の子だからな……うむ……乳房か……」
頭に「好きな人のオッパイ」がつくのだが、単純に「オッパイ」単体がアースが好きだという認識になったフィアンセイ。
最初は顔を真っ赤にして憤ったが、次第に落ち着き出した。
「じ~……もみもみ」
「姫様っ!?」
「もみもみ」
「「「ッ!!??」」」
そのとき、ジーッとサディスの胸を凝視したフィアンセイが、サディスの胸を揉んだ。
その行動に衝撃を受けるサディス、リヴァル、フー。
しかし、それだけにとどまらず、フィアンセイはサディスの胸を揉んだ後、自分の胸を揉む。
そして……
「……っ……イー……」
「……ぇ?」
「そうか……これがアースの好きな乳房……ふふふ……たしかに、我よりは大きい……我はまだ、シーだしな……」
アースと別れて以降、自分を追い込んで努力をしたり、復興作業に従事したりとあまり余裕のなかったフィアンセイが、初めて見せる「にたり」とした笑みにサディスたちだけでなく、カクレテールの住民たちもゾクとっとした。
「しかし! 我はまだ15の成長期! 今後イーには、いやそれ以上になる可能性も十分! ふっ、ふふ……まさかここに来てこのようなアドバンテージを得るとはな……何故なら、クロンやシノブは……ふふふふ!」
「大変ですぅ、お母さん! アースはオッパイが好きなのです!」
「…………」
「私はそこまで大きくありません! たしか、以前お母さんがしてくれた身体測定では、ビーでした!」
そう、「アースはオッパイが好き」に喜ぶ者もいれば、焦る者もいる。
昨日と同じように工事現場で皆と一緒に鑑賞会をしていたクロンは、「あわわ」と焦った様子でヤミディレに縋った。
「私、サディスのように大きくありません……ううう、教えてください、お母さん! どうやったら胸が大きくなるのですか?」
「い、いえ……クロン様……クロン様にはクロン様の良さが……それにクロン様は成長期ですのでそこはご安心を……」
「むぅ~、お母さんには分からないのです! お母さんだって大き……そもそもお母さんはどれぐらいなのですか?」
「え、あ、いや、私は……」
「教えてください!」
「は、はい、い、いちおう、エフですが……」
「ふぁっ!? ……ど、どんな努力を……どんな努力をしたのですか?!」
「い、いえ、それは、あの、天空族は翼をはばたかせるのに胸筋というか胸が発達する特性があるのかと……」
「でも、ガアルさんは胸が無かったです!」
「いや、アレは……その……」
慌ててヤミディレの胸を凝視し、羨ましそうに目を潤ませるクロン。戸惑うヤミディレ。
そして……
「「「「「「「「(エフなんだ……)」」」」」」」」
ブロや現場の男たちは互いに見合ってクールな表情で頷き合ってガッツポーズした。
ただ、そんなやり取りをしながら……
「しっかし、なんかおもしれーな、ブロ。クロンちゃんの彼氏」
「おっ、そうかい?」
「ああ。なんか、努力家で強くて頑張りました……ってだけじゃなくて、ちゃんとこういう一面もあるんだなってよ……」
そんな会話もしていた。
そして……
「お兄ちゃん、ちょっと正座しなさい」
「はい」
張本人であるアースはエスピに正座させられていた。
「お兄ちゃんもお年頃だから、エッチなことに興味あるのは仕方ないけどね、でもオッパイのために頑張るとかダメだよ?」
「……はい……頼むから許して……これに関して妹からマジ説教は、ほんとつらい」
「いちおー私も大きい方だけど、お兄ちゃんは―――」
「あ、いや、そこはマジで大丈夫だから安心しろ。ほんと」
「うん、よろしい」
妹と正座で向かい合って少々説教を受けたアース。その様子に苦笑のスレイヤ。
そして……
「ふっ……大丈夫よ、エスピさん。女性の魅力は胸だけではないの……私がハニーにそれを教えてあげるから! ふとももチラリ♥ おへそチラリ♥」
そこにはエー級忍者であるシノブがセクシーポーズしながらアースの左右をウロチョロしていた。
さらに……
「やれやれなのじゃ。童貞の婿殿は分かっていないのじゃ。乳は楽しむためのオモチャみたいなもので、男と女において最も大事なのは尻とアソコの締――もがもが?!」
「大将軍ぅぅううんん! 幼い子供たちもおりますので、あまり不要な発言は!」
「ぷはっ、なんなのじゃ! せっかくわらわがセクシーポーズでクパっとプニマ――――もがぁ!?」
「ですからぁ!」
両足持って股を開脚していたダブルエー級モンスターであるノジャはラルに抑え込まれたりと、ここでも乙女たちは騒がしかった。
「……お兄ちゃん、分かってる?」
「わ、分かってる! だからシノブも、そ、そういうのはやめろ……あとラル、その怪物を気絶させといてくれ!」
ただ、そんな中……
「へ、へぇ~……そ、そうなんだ……へ~、えへへ……そ、そうなんだぁ……」
「「「「「ッッッ!!!???」」」」」
集落の片隅でブツブツと呟き、声を押さえて顔も平静を保とうとするもニヤケが抑えきれない少女がいた。
「アース様……オッパイが好きなんだぁ……そっ、そうなんだ……私はシノブちゃんやクロンちゃんやサディスさんみたいに美人じゃないけど……えへへ」
少女は両手で自分の胸に触れてニヤケ……
「あっ、でも……こんな大きいの逆に気持ち悪いかな……アース様はオッパイが好きでも、『サディスさんぐらいの可愛らしいサイズ』の方が好きなのかな……? 『クロンさんやシノブちゃんみたいに、無い』方が好きなのかな? だったら、私のは……うぅ~~」
ただすぐに不安そうな表情を浮かべたり……そんな、H級エルフの存在を、まだ世界は知らなかった。
そんな世界各地で乙女たちの反応がある中で……
「……あの……どうしてこんな場面まで流す必要が?」
現在世界全土を巻き込んだ鑑賞会の黒幕であるパリピに対して、付き人でもあるコマン・パイパは侮蔑の表情で尋ねた。
そのコマンの問いに対して、パリピは大笑いしながら答える。
「ひはははは、不遇な環境にもめげずにパナイ努力して、パナイ強くなって、パナイ栄光を掴んでパナイ賞賛を得る……まさにサクセスストーリー。しかもボスの……アースくんの場合はこれからさらにパナイことをやらかす。オレとの戦いも含めてね。そうなると、どうなると思う?」
「それは……もっと大勢の人がアースくんに驚いて賞賛するかと……」
「まっ、普通はね。でもね、人ってのは賞賛されまくると途中から必ず沸き起こる奴らがいる。何だと思う?」
コマンの問いに対して逆質問をするパリピ。パリピのその意図が分からずコマンは答えられない。
すると……
「答えはね……アンチ……だよ。すなわち、成功している奴を妬んだり、粗探ししてイチャもんつけたくなる奴だよ」
「……え? アンチ……ですか? そういうもの……でしょうか?」
「そうさぁ。なぜなら、あまりにもパナイ成功ばかりするやつには、やがて人は共感が出来なくなる……だからこそ、完璧すぎる奴ほど欠点を探したくなるもの。そして、それが見つからないと色々と根拠のないことを憶測でエラそうに決めつけてギャーギャー騒ぐようになるだけ。なら、最初からこっちから欠点やら、馬鹿でスケベな男なら共感できるような材料を提示しちまえばいいってこと♪」
「……で、でも……この欠点はこの欠点で……その、たとえば女性に対する認識がどうのとか言う人がいるかと……」
「それならそれで逆に熱を込めて擁護しようとする味方も増えるから、それはそれでいいんだよ。それで議論させてもパナイ面白そう」
「……だ、だからって、どうして……お、オッパイのシーンを……アースくんの欠点を示すなら他でも……」
「ひはははは、その方がおもしれーから♪」
結局、色々と理屈をこねたところで、パリピの行動の意図の全ては「その方が面白いから」である。
改めてそのことを知らされ「やっぱり」とコマンはため息を吐いた。
「ちなみにコマンちゃんは着やせするタイプでバストサイズはディ――――ほぎゃああ!?」
――あとがき――
月曜日のたわわ
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