秘密の贈り物
僕の家の側には、小さな駄菓子屋さんがずっとある。小学生の頃、僕らはよくそこへ行き、少ないお小遣いで駄菓子を買っては、軒先にある木のベンチで食べていた。
駄菓子屋さんはいつもニコニコしている小母さんが一人でやっていた。小母さんはいつも一人だけれど、レジの横に置いてある写真立てをよく眺めていた。
誰が写っているのか僕が尋ねると、その写真を見せてくれた。そこには背が高くて少し太った男の人と、大きな角が生えた鹿のような生き物が写っていた。
「これ、だれ?」
「小母さんの旦那さんだよ」
「いっしょにいるのは?」
「トナカイっていう動物だよ」
トナカイは聞いた事があった。サンタクロースのそりを引っ張っている、力持ちの動物。
「いまはいないの?」
「お仕事で、遠くに行ってるんだ」
「なんのお仕事?」
「沢山の人に、贈り物を運ぶお仕事をしてるんだ」
「ふーん」
外から夕べの音楽が流れてきた。
「ほら
「クリスマス?」
「一年間ちゃんとお父さんやお母さんとの約束を守った子が、プレゼントを貰える日だよ」
「ぼくももらえる?」
「きっとね。だから、早く帰ろうね」
小母さんに写真を返した僕は、一目散に家へ帰った。
その日の夜ご飯は、僕の好きな物がいっぱいあった。ケーキもある。お母さんに今日は何の日、と聞いたら、クリスマスイブよ、と言われた。クリスマスは神様が生まれた日なんだよ、とお父さんが言った。
僕はプレゼントがもらえるかな、と思いながら、いつもより少し早い時間にベッドに入った。
夜中、少し寒くて目を覚ました。窓の外には星がキラキラ光っている。お父さんもお母さんも寝ているみたいで、家の中は静かだった。
足音をたてないように、いつもご飯を食べてる部屋へ向かった。静かに扉をあけると、ツリーの前に赤い服をきた人がいた。
「ひさしぶり、おじさん」
「久しぶり
「ごめんなさい。起きてたから、プレゼントもらえない?」
白いひげの小父さんは、目を細めて笑った。
「一年間、誰にも小父さんのことを話さないでいてくれたかい?」
「うん! 今日、駄菓子屋の小母さんのところで小父さんの写真見たけど、言わなかったよ!」
「そんな偉い子には、特別なプレゼントをあげよう」
小父さんは持っていた袋から、水色の箱をくれた。受け取った僕は、小指を差し出す。
「また、やくそく?」
「約束できるかな?」
「うん。ぼく、だれにもいわない!」
「よしよし。それじゃあ、また会う時までみんなには内緒にしてね」
「うん!」
大きく欠伸をした僕を、小父さんはベッドまで運んでくれた。小父さんに貰ったプレゼントを抱えて、僕は楽しい夢を見た。
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