飢餓故の睡眠
神は、自身の不定形な身体を変化させ、幾万もの細長い触手をその死体に伸ばす。
そして腹を裂き心臓を取り出し、望むがままに貪り食っている。その様子を見た村人に、怒りの感情が湧いてきた。
折角、墓に埋葬しようとしたのに、これではただの生贄ではないか。そんな怒りが、村人の心の中で空しく響き渡る。
分かっているのだ、敵わないと。村の武器をかき集め、怒りに任せて神に戦いを挑んでも傷一つ付けられないと。
湧き出た怒りを恐怖心に征服され、結局、村人達はただ、立ち尽くすだけであった。
その後、神は飛んだ。自身を幾万もの風に変え、得体のしれぬ謎の塊をまき散らしながら。
柔らかくブヨブヨとしたそれは、村のあちこちにぶつかり潰れ染み込んでいく。
そして翌年、奇跡が起きる。村の畑も井戸も、家畜に人まで活力に満ちていた。その繁栄は何人もの寿命分も続いたという。
「これが、奴らの言う希望という訳か。」僕は、吐き捨てる様にそう言った。人が死んでいるのに何が希望なのか。
だが、これで”希望の門”の奴らが何をしたいのかが分かった。何らかの儀式をして、神を再び呼び戻すつもりだろう。
それも若者達を集めて殺す様な儀式だ。詳細なり門なり、まだよく分からない事はあるけど、そんなのは最早、知る必要すらない。
僕はその儀式を止める為、友人を助ける為に”希望の門”の教会に行こうと決める。そうして家の扉を開け、外に出る。
家の外は、真っ暗な宇宙だった。
~~~~~
遠くには真っ赤な心臓が見える。血に濡れて真っ赤に光り、肉の匂いが僕の所までやって来る。
気付けば辺り一面が心臓で赤く染まり、その様子は黒だった。次々に砕かれていく宇宙は、何色もの色が混ざり合っている。
大いなるモノが存在する。風が吹き嵐が起こり、吊られた若い男達が丸と手足に膨らんでいる。
これは教会の中だろうか、それとも神の外なのだろうか。
全てが多面体で繋がっている。細胞がそれを受け入れ、共存する。支配とは服従の事だ。
~~~~~
そうして僕は、気づけば病院のベットに横たわっていた。お医者さんによると、熱中症らしい。
身体が熱に浮かされたのか、なんだか思考がまとまらない。えぇと、確か教会に行こうと家を出て、それから、、、。
何か、夢を見ていたような気がする。とっても質の悪い悪夢の様な夢を。多分、僕はあの教会に、何か恐ろしい物を感じていたのだろう。
それが熱中症で倒れている時に、夢として現れたんだと思う。僕は、そう思い込む事にした。
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