迂闊故の深淵
その後、僕は探偵さんに、”希望の門”がどんな団体なのか聞く。
探偵さんは頼りになりそうだけど、情報があれば少しぐらいは自分にも出来る事があると思うしね。とは言っても、そんなに情報は多くない。
なぜなら、”希望の門”は秘密主義者の集まりだから。
そもそも、僕の友人が教会に入れた事、それ自体が異常な事だと探偵さんは言っている。
探偵さんは”希望の門”を調査する為に、様々な手法を試したそうだ。
入門希望者のフリをしたり、教会を監視し出入りする人を見つけようとしたり。そして、そのどれもが失敗に終わった。
探偵さんを含めて、教会に誰一人して出入りしていなかったからだ。
『教会に入れたのは、君の友人みたいに若い男性だけ。お陰で調査がなかなか進まなくてね。
ネットにもあんまり情報は乗っていないし、正直、手詰まりって感じだね』
「そうなんですか。それなら、友人を探す手掛かりは少しもないんですか?」『いや、一つだけあるね』
そう言いながら、探偵さんは一冊の本を持ってきた。今まで一度も見た事ない文字が載っている本だ。
『この本は”希望の門”の教本らしい。ただ、書いてある文字が全く読めなくてね。しかも、言語学者に依頼しても読めないとか言ってくるんだよ』
「そうなんですか。、、、あの、この本を借りてもいいですか?」『この本を?事務所には何冊かあるから、一冊ぐらいは大丈夫だね。でも、どうして?』
「ええと、その、自分でも読めそうな人を探してみようと思ったので」その言葉は本当の理由じゃない。
僕がこの本を借りようと思ったのは、その一度も見た事ない本に書いてある文字が読めるからだ。
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探偵さんには少し変に思われたかもしれない。だけど、友人を探せる手掛かりが見つけられるなら、そう思われてもかまわない。
とにかく、なぜか文字が読めるこの本には、何か友人に繋がる手掛かりがある筈だ。早速、本を開いて読んでみる。
そこに書かれていたのは、とある古き神の話。人間には名前を呼ぶ事すら出来ない神の話だ。
大昔、とある村に珍しい疫病が蔓延し、村の若い男だけが次々と死んでいった。
あまりにも男が死に、丁寧に埋葬する暇さえなくなった。
村人達はその結果、死んだ若い男達を一つの大きな墓に埋葬しようとし、その途中で神が現れる。
異形の姿で、見るだけで恐怖し発狂し、なのに誰もが目を背ける事が出来ない神が。
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