(1話 log in)

(注:7話の続きではありません。)



本日○月14日土曜日。

ついにあの謎に包まれた超話題作、「Life,Alina.」がリリースされる。

オレはこの日を心待ちにしていた。

イジメが原因で、高1から家に引きこもり始めてもう5年経つ、オレは容姿が良いわけでもなければ、何か特別な才能があるわけでもない。

昔からオレは外界と関わる能力が無い癖に、人に注目されたかった。皆が言うような青春、とやらを体験出来なかったせいだと思う。

最近になって、せめて趣味のゲーム配信でネットの人気者になろうとしたが、あまり数字も振るわない。

動画配信など止めようかと思っていた矢先、「あのゲーム」の情報があまり聞かない名前の開発会社から発表された。

それはsnsを中心に大きな話題を呼び、リリース前だと言うのにTVのニュースで「社会現象」と報道され、あまりの話題性にアカウント事前登録は3000人までの抽選となった。

この流れに飛びつかない術はない、このチャンスを逃したらオレは終わりだ、そう思い抽選に応募した。

結果、当選した。オレの人生のなかで一番嬉しかった出来事だ。

すぐさま当選結果画像と某動画サイトの生配信予約枠のリンクを貼ってsnsに投稿した所、何十万件の反応があった。度重なる幸運をして、オレの成功は確約されたも同然と思ってしまった。

生放送は五分前から開始している。

さあ。後数十秒でリリース開始、オレはえもいわれぬ高揚感で満ちていた。

あと4秒……2…1!!


瞬間、モニタに白い画面が写し出される。遅れて筆記体風のオシャレなロゴがフェードインした。

「き、きた…」


データをロードしています…

しばらくお待ちください…

しばらくお待ちください…


タイトルロゴを遮る無粋なウインドウがもどかしい。


ロードが完了しました!


サーバーへアクセスしています…


しばらくお待ちください…


アクセスが完了しました!


「おお…!ついに!」


それでは、Life,Alina.の世界をお楽しみください。


…テキストデータの読み込みを開始します…

…0.92%


ふと、オレは動画コメント欄に目をやる。

『◯◯さんの配信フリーズしたからこっちきたわw』

『◯◯もフリーズかよ…△と✕も駄目だったらしいよ』

『まさかログイン出来てるの主だけ?』

どうやらオレ以外の配信者は最初の白い画面で

ゲームがフリーズして、プレイできていないらしい。

そのせいか、他チャンネルから人がどんどん流れてくる。

「期待がオレに集まってきてるってことか…フフフ…」

つい声が漏れてしまう。

『主w』

『デブ声だな』

コメントに少しカチンときたが、こらえた。

ウインドウに新しいメッセージが写し出される。


«ようこそ。クルクマ・ロンガ様 wel come to Life,arena.»

(ウインドウをクリックしてください。)


「クルクマ・ロンガ…?デフォルトネームか?まあいい、これでようやくゲームスタートだ。」


オレはマウスをクリックし、ゲームを始めた。

気になっていたゲーム内容だが、これは素晴らしい!主人公は異形のモンスターに変身し、様々なエネミーを薙ぎ倒す!!というもの。

シンプルなゲーム性だが、これまでに類を見ないリアルな操作感覚がある、まるで、

オレ自身が直接エネミーに攻撃しているようだ!!!

なんて爽快なんだ!凄い!凄いぞこのゲーム!

「滅茶苦茶おもしれええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」

しかも、このオレのプレイは数1000000人が見守っている!オレは今輝いている!輝いているんだ!


『え…?何言ってんの?』


『コイツヤバくね…?』


『ネタだろ』


『ワロタwふざけてないで早くプレイしろよw』


数時間ほど、プレイしただろうか?

エネミーを倒すだけの単純なゲームだが、まだ飽きは来ない、むしろエネミーを倒せば倒すほど気分が高揚していく…!

次はアイツを狙おう!!銃を持ったガキ?だ!!

オレはここでは凄く強い!丸腰だろうと誰にも負けねーんだ!!


「食らえ!!………ガッ…!?」

多分、頭を撃たれた。弱点を貫かれたっぽいので、ゲームオーバーかな?

でも おれのこうげきのほうが


 はやか    たはず のに


まあ     こんて ゅー    すれ ば

『_臨時クエストをクリアしました。報酬がプレイヤーに分配されます。』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る