第3話 遭遇率が高過ぎる。



 アイツとの関わりは、何も校内移動中の遭遇だけには留まらなかった。



 学級委員。

 体育祭実行委員。

 文化祭実行委員。

 年二回の球技大会の実行委員、等々。


 俺は昔から、何かとこういう役回りを任される。

 その歴史は古く、小学1年の時からだ。


 最初の方は「眼鏡だから」という、何だかよく分からない理由で選ばれた。

しかしいつの間にか「だってお前、そういうの得意だろ?」という理由にすり替わっていた。


 それからずっと、ほぼ毎回俺は運営関係のアレコレには名を連ねている。

 別に好きでしている訳では無いけど、頼まれるんだから仕方が無い。


 でも。



 運営関係の集まりに出る度に、俺とアイツは悉く遭遇するのだ。

 その遭遇率は、はっきり言って異常である。



 何度目の時だっただろうか。

 その事に、アイツが遂にしびれを切らした。


「何でアンタは毎回居るのよ!」


 理不尽な八つ当たりだと思う。

 アイツが苛々しているのと同じくらい、俺だって苛々している。


「俺は『押し付けられて、仕方が無く』だ」


 俺はその問いに、自分の理由を素直に答えた。

 そして、問い返す。


「お前はどうなんだよ」

「私は……別に立候補とかはしないんだけど、頼まれれば断る理由も無いし?」


 どうやら言いながら気付いた様だ。

 「あれ? よく考えてみると意外と『やる理由』なんて無いなぁ」なんて呟き始めた。


 1人で何やら考え込み始めたので、放っておいた。



 後でアイツの幼馴染に聞いたのだが、どうやらアイツも小・中学と運営サイドの役割を度々熟してきたらしい。

 

「元々皆の先陣を切ってワイワイとやるの、好きだしね」


 と、言葉少なな彼にしては珍しく雄弁に語ってくれた。

 彼とあんなに長時間言葉を交わしたのは、もしかしたらあれが初めてだったかもしれない。



 因みに俺の友人が、


「アイツ、断れない性質の上に無駄にスペック高いから、任された事は大体何でも熟せちゃうんだよ。そんなだから更なる雑用を呼び込んで、また断れなくての無限ループ。ホント不器用っていうか、損な性格してるよね」


 等と笑いながらアイツに話してたから、「余計な事喋ってんな」と言いながら脳天にチョップをお見舞いしておいた。


 俺の友人は、何かと一言多いのが玉に瑕である。



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