第20話 避難所に向けて

「じゃあ親父、行ってくるよ。」


「おう、気をつけていけよ。そうそう遅れをとることは無いだろうが、気は抜くな。」


「了解。」


 とりあえず目指すのは、人が集まっているコミュニティホール的な場所。やはり助けられる人はなるべく助けていきたい。現状を確認するために、寄ることにした。今から向かう町はダンジョンから近いものの、近くに自衛隊の基地がある訳でもないため、一部の有志が何とかモンスターを倒し、町の人々を守っているようだ。そこまではわかっている。だが、救うのはあくまでもサブの目的。本質は食料等の確保にあることは忘れてはいけない。


 因みに、日本国内には今のところ100を超えるダンジョンが生成されているらしく、ここの付近のダンジョン以外にも、いくつか国の手が届いていない場所がある。

 しかも、日本の中枢、霞ヶ関は既にモンスターによって制圧されている。[千里眼]を用いて覗いたところ、この辺より何倍も強いモンスターで溢れていた。モンスターの行動範囲はダンジョンの周囲―――――――なら良かったのだが、日本どころか世界中でモンスターが見られているところから、際限はないと思われる。

 あと、色々見ている中で気がついたことがあるのだが、世界中の地形が変わっている。

 例えば、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸がかなり近づいていた。

 他にも、アフリカ大陸や南アメリカ大陸、オーストラリア大陸なんかも位置が変動していたようだ。プレートテクトニクスガン無視である。

 唯一、南極大陸は動いてないと思われる。が、しかし、一部に不自然な建設物があることを確認できた。その他の南極の基地と比べても異質であるため、多分ダンジョンだと思われる。でも、その周辺にはモンスターは確認できないので、何かしら別物である可能性も否定できない。単純に寒くて出てこないだけの可能性もあるが。


 まぁ、半ば諦めていたが、科学文明における発明品の数々はもう使い物にならないと考えた方がいいかもしれない。まず、地形が変わっているので、GPSもまともに動かないだろうし、スマホなどの携帯回線も遮断されている。電気は場所によっては使えているが、すでに止まっているところも多い。水道はまだ生きているが、電気が止まったらアウトじゃないだろうか。ガスに関してはうちは田舎なのが幸いしてボンベ式なので、しばらくは持つんじゃないだろうか。


 まぁ、ライフラインが壊滅するのは時間の問題なので、何とかこれに頼らない手法を考えなくてはならない。そのためにも、まずは明日を生き抜くため、物の確保だろう。


「じゃあみんな、行くぞ。」


「「「了解!」」」


 ♢♢♢


 出発から45分程の時間がたった頃、目的の街の周辺まで来たが、ほぼモンスターに遭遇することは無かった。発見したものは他のみんなに倒させたので、俺の経験値は微動だにしていない。


 ただ、今回の移動で、レベルアップの重要性がかなりわかった。


 今のレベルの状態は、

 俺>>>>>隼人>蕾>社長>春>お袋

 といった感じである。

 その結果、俺は断トツで疲れていないし、本来なら体力が勝っているはずのお袋が、隼人よりも先に体力が尽きた。


 だが、あと5分もすれば目的地に着くだろう。お袋に[回復魔法]をかけて何とか頑張ってもらう。[回復魔法]には若干の疲労回復効果もあるらしい。レベルが上がれば、疲労回復専用の魔法も使えるらしいが、今はただの【回復ヒール】ぐらいしか使えない。命を守るためにとったスキルだが、基本的に回避する俺のスタイルにはあってないのかもしれない。ただ、確実に使えるスキルなので、今後も何となくの場面でもガンガン使って、スキルレベルを上げていこうと思う。


 そんなことを考えながらもどんどん歩みを進めるわけだが、5分程歩くと目的地にたどり着いた。


 外観は特筆すべきものの無い至って普通の外見。ただ、玄関や敷地の入口に多分武装として使っている農具や金属バットを持った人間が立っている。多分モンスターの侵入を阻む門番なのだろう。そのため、普通の場所よりも幾分か物々しい雰囲気がある。


 まぁ、そんなことはさておき、とりあえず中の様子を確認したい。食料の状況や防衛の状況など、知りたい情報は山のようにある。


「じゃあ、とりあえず1回中入ってみようか。」


「了解、とりあえず門番?さんに話きく?」


「じゃあそうするかぁ。」

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