第二章 世界の様子
第19話 崩壊した町
各々休憩をして、気が付けば一夜が明けた。
その間に、俺は親父と久々に晩酌をしたり、春と打ち合い稽古をしたり、お袋と夕飯を作ったりと久々ののんびりした家族の時間を過ごした。そのきっかけが正体不明の天災なのはいかがなものだろうか、とは思うのだが。
そんなこんなで早速親父以外のメンバーで町に向かう。ちなみに、隼人のおかげで各自の装備はそこそこに強化が施されている。俺や春の刀はオーガ戦でも使った【鋭利化】、【耐久力上昇】が付与してある。お袋の弓は【耐久力上昇】と、【貫通力強化】。蕾には、隼人の初の[鍛冶]による作品の、メイスが渡されている。素材は、親父たちが狩りをしたときや、春が遭遇戦をしたときにドロップしたらしい、多分鉄の一種だと思われる金属を用いている。
試しに鑑定してみたところ、
魔鉄(低純度):魔力に触れたことにより変質した鉄。魔力を通す。
と出てきた。ちなみにぱっと見は若干紫がかっただけの鉄である。
それで作ったメイスに、【魔力伝導率上昇】、【耐久力上昇】が付与したものだ。ナビゲーターによると、その金属を用いることで、棒状のものであれば魔法の杖のようなものとして使えるようになるのだとか。今度、俺の刀も作ってみてもらう予定だ。刀も棒状ではあるので、たぶん行けるんじゃね?というとてつもなく浅い考えのもとである。ちなみに、メイスなのは適当に振れば強そうなのと、イメージである。つまり、こちらもあまり深い意味はない。
優は、近接格闘系なので武器は持たない。そのため、
ほかのメンバーの靴にも
あと、蕾が怪我をしていたようなのだが、自分でも完全に忘れていたようだ。アドレナリンドバドバだったのだろう。多分骨折だったのだが、レベル1の[回復魔法]でも簡単に治すことができた。多分レベルを上げれば部位欠損ぐらいは治せるんじゃなかろうか。初めての[回復魔法]だったが、そのスキルの価値を実感した。
こんな具合に、できる限りの準備をしてから町に行くことにした。正直なところ、町がどうなっているかは、見当がつかない。もしかしたら、俺たちみたいにそれなりに戦える人達で防衛しているかもしれないし、オーガクラス以上の敵にただ蹂躙され、一面焼け野原なのかもしれない。まぁ考えてもしょうがないので、取り敢えず[千里眼]を発動し、町のほうを見てみることにする。
♢♢♢
side:???
ある男が、己のこぶしを武器に、普通より少し大きい、が、やはり醜悪な
モンスターならではの、一般人よりもかなり強い膂力に押され気味である。長引かせては分が悪いと感じたのか、その男は一気に踏み込み、
「ああくそっ、何だってんだ!2日前ぐらいから、急にバケモンが出て来るようになって、せっかく周囲の人間皆で協力して避難所も開いたにのよぉ!出てくるバケモンがどんどん強くなるせいで守るのが厳しくなってきやがる!」
ダンジョンに近い街にいるため、ダンジョンからあふれ出すモンスターが最初に来ることが多い。そのため、ダンジョンのより深いところから出てきたモンスターがどんどんやってきている。それが、この街の状況だ。
もちろん、武たちの戦ったオーガなど、その例外となるモンスターはいるが、今のところ、ほとんどの強敵がこの街に残っており、町はほぼ壊滅。避難所周辺だけは何とか守っているが、それ以外は瓦礫の山なうえに、避難所自体もいつ襲われるか分かったものじゃない。
守っているとはいっても、そのメンバーのほとんどは武道の嗜みもなく、武器も包丁や鍬、鎌などという始末。このまま行ったら、すぐに守れなくなってしまうのが目に見えている。
レベルや、スキルというシステムができ、戦いに対する難易度が下がったとはいえど、急に強敵を倒せと言われても無理な話である。それに、スキルを持っていても、[剣術]や、[家事]などのパッシブスキルの一部、技術系はあくまで補助。獲得したからと言って急に強くはならない。
例えば武たちの持つ[剣術]ならば、スキルレベルに応じて、剣筋をきれいに整えてくれたり、足場が悪くともうまく剣を振るうことのできるようになる、といった効果である。ゲームのように、
スキルの組み合わせ次第で、再現のようなことは可能だが、一般的ではない。
「おっ、らぁ!」
男のこぶしが
『レベルが上がりました。』
「ふぅ、何とかなったか…。おう、ガキンチョども、久しぶりだな。今は何とかなったが、外に居たら危ない。もう少し行ったところに避難所がある。そこに行くからついてこい。」
子どもたちはこくこくとうなずき、男の後ろについていく。近所のお兄さんなので、あまり心配もしていないようだ。
彼らの周りには、まだまだ危険があふれているが、いったんは落ち着いたようだ。
side:??? end
♢♢♢
「かなりやばいな、壊滅状態かもしれん。一応生存者はいるようだ。」
「どうします?そっちの方も見に行きますか?」
「じゃあ、そうしようか。」
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