第15話 強敵③
オーガの攻撃を耐え始めてから、2分ほどたった。場所は変わらず会議室前の廊下なのだが、オーガの攻撃により会議室の壁が吹き飛んだので、最初よりも広くなっている。
ただ、瓦礫が地面に散らばっていて足場が悪くなっているので、逃げ回りやすさは収支プラスマイナス0だろう。
蕾は離れたところで、心配そうに見ている。ちなみに、戦闘音につられたのか、蕾のほうに何体かゴブリンがやってきたので、その都度俺が投石で倒していたりする。俺の方には経験値は入ってないので、蕾のレベルはいくつか上がっているはずだ。
「そろそろ来てほしいなぁ、まぁ、ここ以外も荒れてたり、モンスターいたりするからきついのかもな、っと。」
AGI差のおかげで避けるのは簡単なのだが、しばらく避け続けて分かった。してのオーガに隙がかなり少ない。剣道で、各上を相手にしたような感覚だ。
つまり、そもそも攻撃をあてることが難しい。
「さぁ、どうしましょうかねぇ。一発で首を飛ばせれば楽なんだが、無理そうだしなぁ。」
〈腕を狙うのはどうでしょう。少なくとも武器は落とせますし。ちなみに、頭が無くなっても動く奴は動きますし、何なら再生することもありますよ。〉
今回のオーガは、こん棒を持っていて、それを振り回して攻撃してきている。リーチが伸びているのが厄介なところもあるので、腕を狙うのはいいかもしれない。
「バケモンじゃねぇか、いや、バケモンだったわ。」
自分でも、こんな状況で何故軽口を叩けるのかが不思議だ。追い詰められてるわけではないが、いい状況ではないのは確か、こんな状況でも安定した精神状態を保てるのは[恐怖耐性]のおかげだろうか。
そんなことを思っていると、後ろから声がかけられた。
「武、来たぞ!どうすればいい?」
親父だ。多分一緒に隼人もいるはず。
「隼人に親父の刀を渡して、
親父と俺の体格はほぼ同じ。操る刀も似たようなサイズの物なので、持ち替えたところで何の問題もなく振るえる。
〈錬金術レベル1で使える
「【鋭利化】、【耐久力上昇】の2つを付与してくれ。たのんだ!」
「了解、【鋭利化】、【耐久力上昇】だな。
そう伝えた瞬間に、隼人がそう返す。
「できたぞ!どうすればいい?」
5秒ほどで、付与自体は終わったようだ。次の指示を仰ぐ声が聞こえる。
「その辺に刺しといてくれ。」
自分でもなぜそんな指示をしたのかわからない、焦りからだろうか。自分でもわからない深層心理には、焦りが表れているようだ。
「了解!お「え、ちょま」らっ!刺さったぞ!」
親父の静止する声が聞こえたが、隼人は問答無用で突き刺したようだ。そして驚きなのが、本当に地面に刺さったこと。想定以上に切れ味が増しているようだ。
「ありがとう、じゃあ、そろそろ行きますかねっ、[身体強化]!」
刀を持ち替えてから、[身体強化]を発動させ、一気に近づく。素早く終わらせるために、[速度上昇]の急接近で奇襲を仕掛ける。ここでMPを使うのは愚策なのかもしれないが、避けられたり、受けられるよりはいいと思う。
一瞬で距離を詰め、刀を振るう。狙うのは、こん棒を振るう腕。そして狙い通りに当たった刀は、するっとオーガの腕を切り飛ばした。
ズドンと音を立てて、握られていたこん棒が落ちる。その音からうかがえる通り、とんでもなく重かったようだ。床に蜘蛛の巣状のひびが走った。
「やべぇなぁ、取り敢えず片手は落としたわけだが、お相手さんはどうでるかね?」
見たところ、再生するようなそぶりは見えず、一安心だ。しかし、こん棒をもう一方の腕で拾おうとしているので、阻止すべく、刀を振るう。今度は切断には至らなかったが、腕の中ほどまで切ることができた。それと同時に腱が切れたのか、腕をだらんと垂らしている。ちなみに、傷口はふさがっているようで、失血死などは狙えなさそうだ。
最後のあがきなのか、体をひねることで一応つながっている腕を振るい、攻撃してくる。ただの遠心力とはいえ、人外の生き物。筋肉で覆われたそれはかなりの質量を持っており、当たったらしゃれにならない威力だ。ただ、簡単に軌道が予測でき、簡単に避けられる。
まだ気は抜けないが、一応一安心。振り回される腕をよけながら、オーガに攻撃する。腕一本持って行った時点で、3000を割っていたオーガのHPはすぐに減っていった。
途中で[硬化]を発動し、ダメージが与えにくくなったこともあったが、それ以外は何の問題もなく倒すことができた。
そしていつも通りあの声が頭で響く。
『レベルが上がりました。』
『レベルが上がりました。』
『レベルが上が…
『レベルが上がりました。』
『スキル[硬化]を強奪しました。』
レベルは8上がり、76に。[硬化]スキルも強奪できて万々歳だ。
多分これでこの建物の中の強敵は倒すことができたと思う。あとは、殲滅だけ。さっきまでと同じように二手に分かれて、俺たちは蕾のレベルを上げながらもう一人の救出へ、親父たちは下のほうの階のモンスターの殲滅に戻る。
そのあとはどうしようか。とりあえず、昼ごはん食べに実家に戻ろうかね。
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