第13話 強敵
「じゃあ、取り敢えず二人ずつに分かれて、レベリングもかねてこの会社の中にいるモンスターどもを片そうか。」
「じゃあ、俺と白崎君。武と青川さんでいいかな?戦力的にこの配置が一番だと思うんだが。」
そんなことを父が言う。
「そうだな、両方前衛と後方支援で別れてるしな。ちょうどいい。」
俺も了承する。
白崎は、[錬金術]の能力の一つである、
青川は、[水魔法]で後方から援護射撃を行ったり、[歌唱]による
若干、青川のほうが戦闘面においては優秀な気がするが、レベル的な問題もあって俺と組むことになった。
「あ、俺たち上階のほうのモンスター殲滅でいいか?ついでと言っちゃなんだが、もう一人の生存者の救助に向かう。」
「了解だ。救助はスキルで位置の確認ができる武のほうが適してるし、この会社の人なら同じ会社の二人が来た方が安心できるだろう。」
「だよなー。俺も誰が残ってるのかは気になるけど、黒野のほうがよさそうだな。」
「白崎や青川も確実に知ってる人だと思うぞ。まぁ、あってからの音のシミということで。あと、白崎に青川。今後、俺のことは武と呼んでくれないか?今この場に黒野は二人いるし。」
「了解、じゃあ俺も隼人でいいよ。」
「分かりました。じゃあ、私のことも蕾と呼んでください、武先輩。」
「おう、改めてよろしく。隼人に蕾。」
こんなとち狂った世界になってきてるんだ、仲間との絆も大切だろう。とりあえず俺が目指すのは、仲間として一緒に活動する皆や、家族の安全の確保。そしてその次にこの世界について知ること。最後に、ほかの生きている人たちと合流し、町規模での安全の確保。
「じゃあ、そろそろ行くか。下は頼んだぞ、親父、隼人。あと、MP温存のために確認はしてないが、まだ
「了解、武たちも気を付けてくれよ?」
「もちろん。じゃあ、また後で。」
そういって、俺たちは二手に分かれ、社内のモンスターを殲滅し始めた。
♢♢♢
「お、この角の先に、五体ほどゴブリンがいるな。蕾、取り敢えずはお前のレベル上げを優先する。まず、俺がゴブリンを弱らせて、すぐに離脱するから、そのあととどめを刺してくれ。」
[マップ]スキルと、[敵感知]スキルの力で、敵の数と種類を判別する。[敵感知]スキルのレベルが上がったおかげで敵の種類がわかるのは便利だ。
「分かりました。武先輩がこっちに戻ってきたら、そのゴブリンたちのほうに行けばいいんですよね?」
「あぁ、そうだ。じゃあ行くぞ。」
取り敢えず、俺は相手の足を切ろう。不定形タイプのモンスターじゃない限り、足を失うのは大きな痛手になる。しかも、完全な致命傷ってほどでもないから、つぼみのレベリングにも向いている。
ということで足を狙ったのだが、そこにあるのは、ゴブリンだった肉塊。
どうしてこうなった?
俺は、レベルアップによって上がった、[剣術]スキルを用いて、的確にゴブリンの足を切り飛ばした。のだが、その一瞬後、ゴブリンがはじけ飛んだ。まるで意味が分からない。
しかも、切った一体だけでなく、周りのゴブリンまで破裂した。まじで意味不明である。
〈それは、[韋駄天]の称号の効果ですね。攻撃行動時に発動し、攻撃を超音速まで加速します。しかも、その際にソニックブームを発生させ、周囲にまで攻撃できます。〉
じゃあ、何で俺はその衝撃波を食らわず、音すら聞こえてないんだ?
〈それも称号の副次的な効果ですね。一瞬音や衝撃を完全に遮断する結界が張られるんです。〉
ふむ、それは自分以外が由来の音や衝撃なんかも遮断するんだな?
〈そうですね、まあ、展開は一瞬のことなので、他への転用は難しいですが。〉
まぁいいや、取り敢えず、つぼみに謝るか。
「武先輩、大丈夫でしたか?とんでもない音がしましたが。」
「あぁ、まず、その音が出た原因が俺だ。驚かせてすまない。あと、弱らせるつもりが、全部倒れちまったんだよな。すまない。」
「いえいえ、大丈夫です。それより、先輩が無事そうでよかったです。」
ナビゲーター、どうにかして威力調節できないか?このままじゃレベリングがきつい。
〈じゃあ、[手加減]スキルでも取りますか。普通の人はあまりとらないと思いますが、マスターはSPに余裕もありますし。今後も似たようなことをすると私の直感が言ってるので、取っておいて損はないかと。〉
了解。じゃあもう一回探して、こんどこそ、蕾のレベル上げかな。
「じゃあ、蕾、取り敢えず次の敵を探そうか。」
「了解です。」
その時、後ろの壁が爆風とともに吹き飛んだ。
〈マスター、次の敵のお出ましですね。〉
そこに現れたのは、闇を纏ったかのような漆黒の
〈おー、さきほどの
まじかよ。
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