第11話 救出?

「うぅ、助かりました。ありがとうございます先輩。」


「おう、揺れを感じて出てきたんだろ?その原因の一端は俺にある。怖がらせてすまなかったな。」


 目の前にいるのは、俺の後輩で会社のマドンナ。青川蕾あおかわつぼみだ。

 見た目はかなり整っていて、顔はキレイ系美人。高めの位置でまとめられたポニーテール、ばっちり着こなされたパンツスーツからは、デキるキャリアウーマンのような雰囲気を感じるが、その実態はとんでもないぐらいに不幸で、若干おっちょこちょいな残念美人。


 今回もまたまた不幸に襲われていたようだった。その原因の一端である俺が言うのもなんだが。


「あの緑の化け物たちに追いかけられたときはどうなるかと思いましたが、先輩に助けてもらえるとは。意外と幸運なこともあるもんですね。」


「いや、それは青川の幸運の基準が低いだけだと思うが。」


「そうでしょうか?私は普通に幸運なことだと思いますけどねー。」


「いや、そんなことは…って、こんな話よりも、何で青川は会社にいたんだ?」


「夜勤から開けたら、なんか誰もいなくて、外見たら、なんかいっぱい化け物がいて、怖かったので今までずっとトイレに引きこもってたんですが・・・。」


「その状態で、滅茶苦茶揺れて、怖かったから出てきた、と。」


「はい、そういうことです。で、追いかけられて、今に至ります。」


「そうだったか。てか、青川。お前食べ物は?」


「2日間何も食べてません!正直おなかペコペコです!」


 まじか、こいつ。この辺になんかあったけなぁ。なんか食えるところ。オーガの肉は食えないだろうしなぁ。


〈そうですね、モンスターの肉は食べれないというか、勝手に消えますし。〉


 え、まじ?じゃあ今まで倒してきたモンスターの死骸、放置してたけどあれがどうにかなるってわけじゃないんだ。


〈はい、何かしらドロップするときは一瞬で消えます。それ以外の時は、時間経過とともに少しずつ魔力になって霧散しますね。〉


 へぇ、今まで気にしてなかったけど、そういうシステムなのか。正直今まで気にしてなかった。あ、じゃあ消えるまでずっと近くに居たら、その分魔力を経験値として吸収できるの?


〈いえ、魔力に帰るときは、ほんの微量ずつが、完全に自然に還っていきますので、近くにいる意味はないです。〉


 へぇ、そうなのか。で、今までドロップしたことが一回も無いんだけど、そんなもんなの?


〈若干運が悪いですね。まぁ、あなたの運のステータスは50とど真ん中なので、乱数で考えればそんなもんです。〉


 そうか。じゃあ、あいつの運は何なんだ…。


 そういって指さすのは、もちろん青川。


〈ステータスを見せてもらっては?おもしろいものがみれるかもしれませんよ?〉


 ナビゲーターが、そういってきた。若干笑っていた気がするのは気のせいだろうか。


「青川、だまされたと思ってステータスって唱えてみてくれないか?」


「はい?ステータス、ですか?」


「ああ、そうだ。」


「分かりました。ステータス。わ、なんか出てきましたよ?」


「じゃあ、次はステータスオープンと唱えてみてくれ。」


「はい、ステータスオープン。」


 お、見えた。どれどれ?


 名前:青川蕾 種族:人

 Lv:1 次のレベルまでの必要験値:4

 SP:10

 HP40/40 MP8/8

 STR:4

 DEF:4

 INT:8

 RES:5

 DEX:7

 AGI:6

 LUC:1


【スキル】

 家事(V) 歌唱(III)


【称号】

 超不幸


 ふむ、ステータスだけ見るとこれは魔法職向きかな。ただ、LUC:1ってなんだ、

 1って。しかも称号に超不幸とかあるし。


〈なんともまぁ、運のない方ですね。ただ、称号の[超不幸]は、便利そうな効果ですね。〉


 ふむ?どんな効果だ?


 超不幸…とても不幸な者に与えられる称号。称号の持ち主に合わせたステータスの一部に上昇補正が乗る慈悲の称号。〔対象:MP、INT〕


 なんとも素敵な効果だろうか。苦笑を禁じ得ない。前半部分を除けば、のどから手が出るほど欲しい称号なのだが。


〈そうですね。まぁ、便利な称号なので、レベリングしてあげて後衛として頑張ってもらうのが一番じゃないでしょうか。〉


「なんなんですか!このステータス!馬鹿にしてますよね!あーそうですよ。どうせ私は運が悪いんです。ほっといてくださいよ。そんなのは自分が一番わかってますから。」


 青川が自分のステータスを見てぶーたれている。


「まぁまぁ、青川。そのおかげでこの世界では活躍できると思うぞ。」


「先輩まで運が悪いこといじってくるんですか!泣きますよ!」


「いやいや、そうじゃなくて。称号の[超不幸]ってあるじゃん。それがステータスの上昇に補正がかかる称号らしくて、ちょっと頑張れば、さっきの化け物、ゴブリンなんて一瞬で倒せるようになるさ。」


 因みに、青川は五匹に追われていた。ワンパンで倒せたので成長を感じた。


「私が役立てるようになるってことですか?」


「あぁ、そうだ。とりあえず、そのためにスキルを獲得してほしい。」


「スキル、ですか?ゲームみたいな?」


「あぁ、そうだ。おすすめなんかも教えてやれるが、どうだ?」


「じゃあ、おすすめ教えてください。」


 ナビゲーター、青川におすすめなスキルってあるか?


〈そうですね、[水魔法]なんてどうでしょうか。いざという時の飲み水確保にも使えますし、レベルを上げていけば、広域制圧に特化した魔法なんかも使えるようになりますからね。〉


 了解、[水魔法]ね。


「[水魔法]なんてどうだ?いざという時の飲み水確保にも使えるし、レベルを上げていけば、広域制圧に特化した魔法なんかも使えるようになるぞ。」


〈マスター、そのまま伝えただけじゃないですか。〉


 しゃあないだろ、俺、[水魔法]とかよく知らないし。


「[水魔法]ですか、じゃあ、そうすることにします。」


「おう、じゃあこの後は、俺の親父と、白崎もここに来ると思うから、一緒にこの会社の制圧がてら、レベリングだな。」


「白崎先輩も来てるんですか?あの人戦えなさそうですけど。」


「おう、あいつは生産職極めるとか言ってたな。」


「期待を裏切りませんね。流石です。あ、そういえば先輩のステータス見せてもらってないです。見せてもらえませんか?」


「おぉ、いいぞ。そういえば見せてなかったな。」



 名前:黒野武 種族:人

 Lv:63 次のレベルまでの必要験値:6

 SP:410

 HP3150/3150 MP100/315

 STR:441

 DEF:315

 INT:315

 RES:315

 DEX:252

 AGI:504(×2)

 LUC:50


【スキル】

 家事(V) 剣術(V) 速度上昇(I) 膂力増強(I) 隠密(II) 鑑定(II) マップ(II) 敵感知(II) 物理軽減(I) 体幹強化(I) 回復魔法(I) 火魔法(I) 身体強化(I) 鬼の咆哮(I) 


【ユニークスキル】

 成長限界突破 必要経験値超減少 獲得経験値超上昇 スキル強奪 

 遞ョ譌城?イ蛹門宛髯占ァ」髯(ロック中)ナビゲーター 千里眼 空間魔法(I)


【称号】

 先駆者 挑戦者 先駆け 高速 韋駄天


「おー、オーガ戦から見てなかったけど、結構伸びたな。」


「な、何で、LUCが50もあるの???」


「いや、お前、それはお前の運が悪すぎるだけだろ。」


 そんな情けないツッコミをかましながら、白崎たちの到着を待つ。


 忍び寄る、不幸の気配に気づかずに。


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