第5話 家族
「おい、大丈夫だったか?」
戦闘が終わったのを感じたためか、白崎がやってきた。
「ああ、思ったより強くはなかったな。普通に勝てたぞ。」
「よかった、お前が怪我したら誰が俺を守ってくれるんだって話だからな。」
「おい、それが目的かよ。」
「当たり前だろ?何がうれしくて俺の生存に関わらない野郎の状態を心配しなきゃいけないんだよ。女の子ならまだしも。」
「はぁ、お前はそういうやつだったよな。まぁいいさ。少なくとも、ある程度の安全が確保できるまでは守ってやるよ。」
〈マスター、それもいいですが、この人にもある程度戦っていただくべきかと。生産系のスキルの確保や、生産にかかわるDEXの数値を伸ばせますし。〉
それもそうか。俺がもう少し強くなったらこいつのレベル上げもするかな。
「とりあえず、実家に向かうからついてきてくれ。急がないと日が暮れる。さすがにそれは危ないだろ。」
「それもそうだな。さっさと行こう。」
♢♢♢
一回ハウンド・ドッグと戦ってからは敵に遭遇することなく実家についた。
ナビゲーター曰く、レベル差があるのが一目でわかる状態なので、雑魚が襲ってきづらいらしい。もう少しレベリングしたかったので残念だ。どうにかならないか頼んだら、今度レベル差を隠す方法を教えてくれるらしい。ありがてぇ。
そんなこんなで実家についたわけだが。
「ただいまー。親父ー、お袋ー、帰ってきたぞー。」
家族はもう一人いるが、今はめんどいので呼ばない。
とか思っていると、後ろからダダダダダダッと足音がした。
「なんだ敵襲かっ!」
後ろに振り向く。するとそこにいたのは、
「お兄ちゃん、お帰りぃー!」
「おう、ただいま。とりあえず離れてくれ。」
「ヤダ、まだお兄ちゃん成分補充中だもん。」
この状態の妹を引きはがすのは至難の業なのだが、直接はがすわけにはいかない。怒らせると、そこら辺のモンスターよりよっぽど怖いからだ。前も言ったがこいつは、全国レベルの剣道少女。下手したら親父より強くなってる可能性もある。つまり、俺に勝ち目はほぼない。なので、説得を試みる。
「頼む、今は一旦離れてくれ。後でならくっついててもいいから。」
「しょうがないなぁ、絶対だよ!」
説得成功。良かった。
気を取り直し、家に入ることにする。
その途中で妹と色々話していた。
「そういえば、お兄ちゃんはなんで急に帰ってきたの?」
「急に化け物が現れ始めただろ?その対抗策に刀が欲しいのと、あとは家族の生存確認だな。」
「あー、そういえばなんか変なのいるねぇー。そんなに強くないからいいんだけどねー。」
「おい、白崎。メンタルでJKに負けてどうする。」
「いやお前、剣道全国レベルの人間と比べるなよ!俺は何の戦闘力も持たない一般人なの!しょうがないでしょ!」
「お兄ちゃん、そういえばこの人だれ?」
「あぁ、こいつは俺の同期の白崎隼人だ。」
「ご紹介にあずかりました、白崎隼人です。よろしくね、えーっと。」
「あぁ、妹の名前は春だ。」
「そうか、そういえば職場で何回かその名前聞いた気がする。よろしくね、春ちゃん」
「はいっ!よろしくお願いします!」
♢♢♢
「あ、お袋。ただいま。」
「え?武どうしたの急に帰ってきて。」
「いや、急に化け物が現れ始めただろ?その対抗策に刀が欲しいのと、あとはみんなの生存確認が目的だよ。」
「武そんな心配しなくてもいいのに。ここに住んでるのはしっかりと自衛できる人ばっかりよ?」
「分かってはいるんだけど、やっぱり自分の目で確かめたいだろ?」
「そうかもしれないわね、というより、後ろの友達を紹介してほしいのだけれど。」
「あぁ、こいつは…。」
そんなこんなで、お袋と、春の無事は確認した。あとは親父だ。
「お袋、親父は道場にいるの?」
「さぁ、どうなのかしら。そこは春に聞いたほうが早いんじゃないかしら。」
「それもそうか、おーい春。親父道場に居たか?」
そう伝えるために、春のほうを振り向くと、山のようなご飯をほっぺいっぱいにほおばっている春の姿があった。
「んんん、んんんんんんんんんんんんんんー。」
「全く何言ってるか分からん。てか相変わらずよく食べるなぁ。」
春は現在17歳、今年で18歳なので、受験生だ。顔は可愛いほうで、スタイルもスレンダー気味ではあるが、いい方である。そんな細い体のどこにあほみたいな量のご飯が詰まっていくのか。昔、春にそんなに食べて太らないのか聞いたところ、
「太りにくい体質なうえに、毎日たっくさん動くから全く太らないんだー。」
と返された。なんともまあ、女の子には嫉妬されそうな体質である。ちなみに俺も若干人より太りにくい。これに関しては、筋肉量が多いからだろう。基礎代謝が高く、太りにくいんだと思われる。
「道場にお父さんいたよーって言ったの。まだいると思うよ。」
「じゃあ、道場行くとするかな。」
そう言って俺は腰を上げた。
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