第2話 初陣

「おい、白崎。こんなところで何してるんだ?」


「黒野!お前は知らないのか⁉今この世界のいたるところで、なんかよくわからねぇ化け物が現れて人間を襲ってるんだよ!」


「いや、それは知ってる。ここから下も見えるしな。逆に聞くが、お前はなんでそんなご時世にあえて室内から出て俺の部屋の前に来た?」


「そんなもんは決まってる!お前が強いと聞いていたからだ!守ってもらえそうだろ?」


「はぁ?そんなことのために?わざわざここまで来たのかよ。」


「黒野!お前は馬鹿か!この世に命よりも大切なものはねぇ!なるべく生存の確率の高い場所で、知っているところといえば、お前の近くだったってことだ!」


「そうかよ、まぁ俺自身知り合いで助けられるやつは助けたいとは思うしな。勝手にしろよ。」


 そんな感じで、俺、黒野武と、同期の白崎隼人は行動を共にすることになった。


「とりあえず、一緒に行動するにあたって、なるべくこの世界の情報は共有しておきたい。白崎はこの世界について、何か知っていることはあるか?」


「とりあえず、俺が会社を出てくるまでは会社の建物は綺麗に残ってた。後、ここの建物も綺麗な方だった。」


「ふむ、今のところは安地ってことか?」


「あぁ、多分だけどな。とりあえず、そうだと仮定しておこう。で、お前は何か知ってんのか?」


 何か知っていること…。…………あ、そういえば朝記憶が途切れる前に、スキルがうんたらかんたらって聞いた気がする。


「白崎はRPGゲームってするか?」


「スキルとか、魔法とかあるあれだろ?会社入ってからは忙しすぎてほぼできていないが、学生の頃は仲間と一緒に夜通しプレイしたんだが…。あいつらはよぉ、いいよなぁ。ホワイト、まっとうに休みのある会社で働いて、嫁さんこさえてさぁ!」


「白崎、ステイ、ステイ。で、その反応はするってことでOKだな?」


「あぁ、すまん取り乱した。すると捉えてもらってかまわん。」


「じゃあ、単刀直入に言うが、この世界はそんな世界に近づいている可能性がある。」


「は?ゲームの世界に?そんなことがあってたまるかって話なんだが。」


「だが、よくわからん化け物が街を闊歩している世界だ。そんなことがあっても不思議ではなくないか?」


 そう言い切った時、隣の部屋から大きな音がした。


「ッ!化け物か⁉遂にここにも入ってきやがったか!」


「嘘だろっ!黒野、大丈夫なのかよぉ。」


 そんなことを言って、白崎が足に抱き着いてきた。


「分からん!ただ、その、足に抱き着くのはやめろ!気持ち悪いし、いざという時に動けない。」


 白崎が足を離してくれたので、とりあえず竹刀をもって、少しずつ玄関のほうに近づいていく。

 玄関の扉の前まで来たところで、勢いよく扉を開け、音のした方を確認する。


「扉が開いている?中に何かいるのか?」


 隣の部屋の扉が開いていた。


 足音を殺し、少しづつ部屋の中に入っていく。周囲に気を配るのも忘れない。


「!あいつら、ついにここまで来やがった!」


 中にいたのは緑の人型の生物。ツイッ〇ーのトレンドの動画にいた化け物、小鬼ゴブリンと称するのに相応しい、醜悪な化け物だった。


「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ!」


「気持ち悪い鳴き声のバケモンだな…。」


 ぼそっとつぶやくと、そいつの視線がこちらを向いた。人間よりも耳が良いらしい。


「もぉ、逃げようにも逃げれなさそうだなぁ!」


 大きな声を上げ、自分の心と体に喝を入れる。


「うぉっしゃあ!行くぞ!」


 竹刀を小鬼ゴブリンの頭ぐらいの高さまで上げ、中段の構えをとる。相手の戦闘能力が分からない以上、むやみに近づくのは危険だろう。

 そんなことを考えていると、小鬼ゴブリンがこちらに向けてとびかかってきた。

 それを俺は難なく叩き落す。ゲームなどと同じく、小鬼ゴブリンは雑魚な部類に入る可能性が高いだろう。

 ただ、まだゴブリンは生きている。気は抜けない。

 ゴブリンは起き上がるとすぐにもう一度とびかかってきた。

 なのでもう一度叩き落す。それを五回ほど繰り返したのち、


『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上が……………

『レベルが上がりました。』

『この世界において、初のレベル10突破を確認。称号[先駆け]を獲得しました。』


 ゴブリンは息絶えたようだった。そんな感じで、俺の初陣は終わった。

 そして、一つ確実になったのは、この世界にレベルというシステムや、称号というシステム、スキルなどというシステムができたという事だ。

 この世界の常識が、根本から覆されていくような気がした。

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