部屋①

またしても扉の嫌な音が屋敷中に響き渡る。


そこは先程までの広すぎる空間とは別物の「質素な小さい部屋だった」。


「なぁ、別にここ探索する必要あるか?」

植村の疑問はもっともだ。

元々出口を探すのが目的なんだからざわざ屋敷の隅々まで探索する必要はないだろう。


「でもさ、外から見た感じだと入ってきたところ以外から出入りできるとこなかった気がする」

「え、じゃあどうするんだよ」

先程見た光景を説明する石山に困惑するアキラ。

もし石山の言う事が本当ならここから一生出られないという事になる。


「でも、流石にもう一つくらい出口はあるだろ」

いつも通り緊張感のない松本の発言だったが、永石がそれを遮った。

「いや、意外と何とかなるかもしれないよ」

「どういうことだ?」

「さっき入ってきた扉を見てたんだが、あれ鍵かかってると思うよ。それに鍵穴もあったし」

永石の説明にどよめく。


「じゃあ、その鍵を見つけないとここから出られないのか!?」

「いや待て、混乱してきたから状況を整理しよう」

混乱するりおに石山が落ち着くよう促す。


「まず、俺らが入ってきた扉は開かなくて、鍵がかかっている。」

「そして他の出口は見当たらなかった。」

「鍵を探すって言ったって、ありもしない出口を探すよりかはマシだろ?」

「そ、それもそうだな」

言い返せなくなった松本が同意する。



「あ、おい!この棚何か入ってそうだぞ!」

皆の話を聞きながら部屋を物色していたアキラが何かを見つけたようだった。


「ごまだれ~」

活躍出来てうれしそうなアキラが楽し気に棚を開ける




「――――え」


そこに入っていたのは扉の鍵でもなく、食料でもなく、




――――先程電話をかけてきた野原の死体だった。

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