入口①
なぜ、こういう雰囲気のある屋敷の扉は嫌な音がするのか、
ホラーゲームなどでよくあるなって欲しくない音が屋敷に響く。
屋敷のなかは小綺麗で、埃一つない。
―――そう期待していたがやはりあり得なかった。
むしろ想像以上に酷い有様だ。
まず最初に鼻をつんざくような、腐りきった血肉の匂いがし、床と壁に無惨に飛び散る血の跡が目に入った。
極めつけは「何かの」死体だ。
腐敗しきっていてもはや何の生き物だったのかすら識別できない。
だが、探索者達が驚いたのは別のものだった。
「植村!!」
植村がそこにいた。
だが誰一人「大丈夫か」の声を掛けなかった。
腕に大きな傷があったのだ。
「お前...それどうしたんだ?」
尋ねたのはミカだった。
「いやさ、自分でも良く分からないんだ。」
これまでの事を語る植村。
「松本に背中を思いきり押されたのは覚えてる。だけど、それからなんで逃げ回ってたのかが分からないんだ。」
「え、どういうこと?」
「いや、何かに追いかけられたのは覚えてる。実際怪我してるし。」
「だけど何に追いかけられたのかと何故追いかけられたのかが覚えてない...」
どうしても思い出せないので頭を抱える植村。
「いや、まずは応急手当をしないと。」
そう切り出したのはアキラだ。
「いや、お前こんな状況でなんか持ってきてるのか?」
「ちゃんとあるよ、消毒液と包帯。」
と言って、消毒液はリュックから、包帯はアキラの腕に巻いてあったのを使うようだ。
「お前それ...」
仲間たちが心配するのも無理はない。
アキラはリストカットをしているのだ。
「でも、これは大分前に切ったやつで、もう完全に傷は塞がってるし、包帯に血も付いてないから大丈夫だよ」
「それにどう見てもお前に使った方がいいだろ」
そう言って植村の腕に包帯を巻く。
「さてと、植村も見つかったしさっさと撤収しようぜ!」
「こんな気味の悪い場所さっさと離れたいよ」
そう切り出したのは石山だ。
普段自分から話を切り出すことがあまりない石山が催促するのはよっぽどだ。
「そうだな!お~い帰るぞ~」
そうやって永石はまた扉の取っ手に手を掛けたが、
―――扉が開くことはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます