第8話著作権
「タケちゃん、大変よ! 昨日のタケちゃんに両手をもてあそばれる魔王ちゃんにインスピレーションを受けてシブにあげたイラストがバズってるの!」
プールでの一件が終わった次の日の教室で、スマホをチェックしていたヨウコが突然叫び声をあげた。
「なんだいきなり。ヨウコ、いったいどんなイラストをあげたんだ」
「それがね、タケちゃん。タブレットに映った上半身の魔王……この魔王は魔王ちゃんみたいな女の子の魔王じゃなくて、悪の帝王って感じのおらついている魔王なんだけれど……その魔王がしっぽが映っているスマホ動かすと、タブレットに映っている魔王が連動してあひんあひんあえぐイラストをあげたの」
ヨウコのスマホを見ると、この世の支配者然とした威厳のある男の魔王が、しっぽの映っているスマホをあっちやこっちに動かされてよがっているイラストが何点かシブにあげられている。幼なじみがこんなものを描いたと思うと背筋がぞわぞわしてくる。
「ほら見てよ、タケちゃん。このいいねの数。あたしよりもずっとイラストがうまい絵師さんが、あたしのイラストよりももっともっとどぎついイラストあげてるんだよ」
ヨウコの言う通りだ。ヨウコのイラストは、男の魔王がよがっていると言っても全年齢向けな感じだったが……なにやらVR魔王のタグが付いたイラストがたくさんシブにあげられていて、そのほとんどが18歳以上のものになっている。
「タケちゃん。VRってさ、専用のゴーグルをつけなきゃいけないのがネックだったじゃない。でも、このタブレットとスマホを連動させるって方法だと専用のゴーグルがいらなくて、むれなくていいって評判になってるの」
たしかにVRは専用のゴーグルがわずらわしくて、それがいやで俺もあまりやっていなかったのだが……
「これ、原理的にはウィーのヌンチャクコントローラーでも可能なシステムじゃないタケちゃん。コントローラーの動きを内部のジャイロセンサーで感知させればいいんだから。実際、ヌンチャクコントローラーを頭にちょんまげみたいに乗っけて、ミクちゃんを全方向から見られるようにした動画もあるし」
その動画なら俺も見た。パソコン画面を実際に下からのぞくと、スカートの中身が見られるとは思ってもいなかったのだが……
「でも、タケちゃんのシステムだとタブレット端末に魔王ちゃんの上半身が映るじゃない? だったら、タブレット端末をぶんぶん振れば、男の魔王がずっこんばっこんされてる雰囲気が出るじゃない?」
ヨウコよ、ここは学校だ。そんなあけすけな話をしていると、お堅い委員長のアケミが……
「聞き捨てならないわね」
ほら来た。どうせいつもみたいにモラルがどうのなんてお説教を始めてくるに決まってるんだ。
「タケシ君。せっかくのアイデアをネットに放流するだけじゃあ一銭にもなりはしないのよ。ここまで話題になってるんだから、しっかりタケシ君のアイデアがオリジナルであることを主張しなくちゃあ」
え、アケミ。聞き捨てならないのはそこですか?
「ヨウコさん、そのネットでのバズりぐあいはどうなっているのかしら」
「それはね、アケミちゃん。いまのところシブでイラストが大量に投稿されているくらいかな。で、これは実現可能な技術なのか話題になってるわ」
「そんなの実現可能に決まってるじゃない。現に昨日タケシ君がわたしたちのまえでやってみせたものね。そうよね、タケシ君。昨日は魔王さんの上半身はタケシ君のスマホの映っていたけれど、それをタブレットに置き換えるくらい簡単よね」
「そ、そうなるかなアケミ」
まずい。あれはあくまで二次元フラットな魔王をそれっぽくスマホのアプリであるかのように見せていただけで、それがテクノロジーとして実用可能かなんて考えもしなかったのだが……
「ならば話は決まりね、タケシ君。しょうがないからこの委員長のアケミが手伝ってあげる。このままじゃあ、ジョブズのアイデアをパクって大儲けしたビルゲイツみたいな人間が出るのも時間の問題だもんね。ああ、しょうがない。これだから研究にしか興味がないようなタケシ君みたいな人間には、現実を相手にできるパートナーが必要なのよ。それができるのはわたしくらいなものね」
すっかりアケミがやる気になっている。ここは逃走といこうか……
「どこへいくのかしら、タケシ君」
しかしまわりこまれてしまった!
「タケシ君。おとなしくあのスマホ連動システムがどうなっているのかこの委員長のアケミに教えなさい。タケシ君のアイデアをしっかりお金に換えてあげるわ。これでタケシ君の大好きなゲームが思う存分楽しめるわよ。どう、うれしいでしょう」
うれしくない。俺はレトロゲームが好きなんだ。ガチャや課金でじゃぶじゃぶ金を使うことはないんだ。そんな金儲けしか考えない資本主義の犬になりたくない。
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