第9粒「創作~ベッドの下」

「早く来ねえかなあ…」


 男は自室のベッドの下に隠れていた。

 その理由は、部屋に遊びに来る彼女をビックリさせるためだった。

 二人揃ってが好きなこのカップルは、遊びを頻繁にしていた。


 ガチャン…


(おっ?来た来た。)


 玄関のドアが開く音がしたので男は息を殺してを伺った。

 同時に男は彼女が入ってきた際に自分へをしなかったことが少し気になった。


(何で黙って入ってきたんだ?いつもは何か言いながら入って来んのに…さては、も俺をビックリさせようとしてんな?)


 男は彼女が自分と同じようにを仕掛けようとしていると思った。

 しかし、玄関のドアの開く音が聞こえてから数分経っても彼女は部屋に来なかった。


(玄関でなにしてんだ?…ッ!!!)


 気になった男はベッドの下から出ようとしたが、目に入った物に思わず体が固まった。

 そこには少なくともがあった。

 足音もさせずに多数の足に、男はただひたすらが自分に気が付かないように祈っていた。



「お邪魔ー。ごめーん、遅くなって。あれ?いないのー?」


 どのくらいしていたのか、予定より遅れたことを謝罪する彼女の声がした。


 出来事を彼女に話そうとベッドの下から出ようとしたその時、男はある異変に気がついた。


(なんで部屋が真っ暗なんだ……それにこの足……)


 いつの間にか部屋の中は真っ暗で、その暗闇の中にがあった。


(………この足は彼女あいつのじゃねえ!なんで!さっき確かに声が…!!!)


 さっき自らが聞いた声が彼女のものだったかどうかを振り返る男の目の前に足がゆっくりとベッドに近付いてきた。


(来るな!こっちへ来るな!)


 心の中で懇願する男の声はには届かなかった。


 の主は男の元へ近づいてきて言った。







 ミィツケタ………








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