第8粒「後ろ姿の正面」
皆さんは、街中を歩いていて前を歩く人の後ろ姿が気に入って、正面からも見てみたいと思ったことはありますか?
ある?
ない?
皆さんがどちらを思うにしても、私はある体験をして以来、どんなに正面が気になったとしても後ろ姿を眺めるだけで満足することにしています。
「ね?あの人カッコ良くない?」
「後ろ姿だけじゃわかんなくね?」
その時、私は仲のいい友達と二人で映画を観た帰りに、前を歩いていた長身の男性の後ろ姿にああだこうだ言っていました。
もちろん、その男性には聞こえないボリュームで話していました。
その男性と私達は、
「いやいや、急に追い抜いたら気持ち悪いって。」
「大丈夫、あのコンビニにダッシュで行って、中から立ち読みしてるフリしてチラッと見るだけだから。」
そう言うと友達は止める私をよそにコンビニに走って行ってしまいました。
その道は一本道だったので、友達の思惑通り男性はコンビニの前を通り過ぎました。
「で、どうだった?」
私は、友達を止めてはいたものの本当はすごく気になっていたので、コンビニに着くとすぐに友達に結果を訪ねました。
しかし、なぜか友達は青ざめた顔をしたまま、何度訪ねてもはぐらかすだけで話してくれませんでした。
それから数分ほどコンビニで商品を物色したあとで外に出たとき、友達はその男性がいないことを確認してから声を震わせて私にこう言いました。
「あの人、目玉がなかった…」
私はそれを聞いて、最初は重い視覚障害の人だったのかと思ったのですが、視覚障害の人をわざわざ目玉がないと言う必要もなく、そもそも、その男性はずっと盲導犬も杖もなかったのに一切の迷いもなく歩いていたので、何かおかしいと感じた私は、友達に詳しい話を聞こうとしましたが、その友達はそれ以上何も言いませんでした。
その時、友達が見た男性の顔がどうなっていたのか、なぜコンビニの中から外を通り過ぎる人の目玉がなかったとわかったのか、それはわかりませんが、その時の友達の怯え方は普通じゃなかったので、恐らくその男性に普通の人間とは違う何かがあり、友達はそれを見てしまったのだと思います。
何かを見てしまった友達はそれ以来、知らない人とすれ違うときは顔を伏せるようになりました。
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