第7粒「ビデオテープ」

 21世紀生まれの人には馴染みがないだろうが、昔は映画やドラマを見るのに、ブルーレイでもDVDでもなく、ビデオテープというものを使っていた。


 詳しく説明するのは面倒なので証略させてもらうが、ビデオテープは、収録された映像を見終わった後にをしなければそれを見返すことができなかった。

 正直、今と比べてかなり不便だった。


 そんなビデオテープで自分は不思議な出来事を体験したことがある。


 正確には自分の兄貴が体験したことだ…




 これは、1996年の夏休みに起きたことだ。

 自分の兄貴が高校を卒業したのが年が明けた1997年だったから、何年の出来事かはハッキリしている。

 ただ、正確な日付は覚えていない。


 その夏、兄貴と自分はレンタルビデオ屋でを頻繁に借りていた。

 怖いビデオというのは、だけではなく、レンタルビデオ屋でしか見ることが出来ないも含めた怖いビデオだ。

 兄弟二人してが好きだったので、その年の夏休み期間中に少なくとも50本くらい観たと思う。


 その日は昼間のうちに5~6本厳選して借りてきて、夜に兄貴と二人で観ようと思っていたが、兄貴が夜遊びをしていたため、俺は兄貴に先に観る許可を取り、夜中(と言っても23時くらい)にリビングを真っ暗にして、イヤホンを着けて一人でを観ていた。

 1本1時間くらいのやつを2~3本観て、次のビデオを再生していた途中で兄貴が帰ってきて急に肩を叩いてきた。

 これには流石にったが、土産としてコンビニでジュースとを買ってきてくれていたので、すぐに許した。


 そして、俺に見終わったビデオの内容の感想を少し聞いてから、兄貴は俺が見終わったビデオを持って部屋にいった。

 先に書いた通り、いつもは二人で一緒に観ていたが、その日は俺が先に観ていたこともあり、途中から一緒に観ることもないだろってことで、俺はリビングで、兄貴は部屋で観ることになった。

 ちなみに、兄貴は部屋に自分のテレビとビデオデッキを持っていたから、いつもは兄貴の部屋で一緒に観ていた。


 俺が最後の1本をセットして観ようとしたときに、兄貴が1本のビデオテープを手にして部屋から出てきた。

 兄貴は俺に、お前ちゃんと巻き戻しとけよ、いきなりはビビるだろと言ってきた。

 しかし俺がちゃんと巻き戻したと伝えると兄貴は、そんなことはない、ちょっと観てみろと言って、リビングのビデオデッキにそのビデオをセットした。

 すると、俺がさっき観たビデオの一つがされた。

 それを観た兄貴は、さっきはいきなり砂嵐から始まってが映ったんだよ、と言ったが俺はそれを信じようとしなかった。

 しかし、その時の兄貴は柄にもなくらしく、その日はは観ないで寝てしまった。


 次の日、夜にはビデオを返しに行かなくてはならなかったため、兄貴は観なければ勿体ないといい、昼過ぎから部屋で昨日観なかったビデオを観ていた。

 そして、ビデオを見終わった兄貴が俺にこう言った。


「昨日のな、最後まで見終わった後の砂嵐画面で暫くと出てくるから後で観てみ?マジで気持ちわりいから。観たら返しといてくれ。あと、やるからまたテキトーに借りて来て。」


 それだけ言って兄貴は2000円とレンタルビデオ屋の会員カードを置いて出掛けた。

 その後で、俺がリビングでビデオを見直したが、最後の砂嵐画面でほっといても


 ちなみに、俺はこの事はこの瞬間まで兄貴にも誰にも話してはいない。






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