第50話 口に気をつけろ
「小僧、10月末ごろに『自分の身体に入るモノには気を使え』というのを教えたのは覚えているよな? 今日はその逆だ。
『自分の身体から外へ出ていくもの』つまりは言葉にも気をつけろという話だ」
11月に入ったばかりの頃、ススムは「言葉に気をつけろ」というのをお題に講義を始める。
「言葉は人を引き付ける力があるんだ。小僧、お前が発した言葉に合った人間が集まり、集まった者たちが発した言葉でお前が変わり、
周りの人間の言葉で変わったお前が集まった人間に合った言葉を発するようになる。これはグルグルと絶え間なく
小僧、お前の発した言葉が周囲に影響を与え、それに合わせた人間が集まり、そいつらによってお前の人生が変わっていくんだ。
昔の言葉に「類は友を呼ぶ」というものがあるが、あれは本当の事なんだぞ。お前の発する言葉に合った人間が呼び寄せられるんだ」
ススムは言葉は
「特に気を付けたいのは「悪口」だ。誰に何を言うかは関係無い。悪口を言うと「キモチイイ」一方で、多かれ少なかれストレスがたまるんだ」
「ええ!? 悪口言うとストレスが解消されるんじゃないんですか!? あ、俺は言ってませんけど」
「本当だとも。これは科学的に証明されていて悪口を言うとストレスを感じた時に出るストレスホルモンが分泌されるんだ。だから悪口は新たなストレスの
だが大多数の貧乏人はそれに気づいていない。そして大多数の貧乏人というのは話のスケールがとんでもなく小さい。
あそこのコンビニ店員の接客態度が悪いとか、クリスマスに1人で買い物に出かけたら店員のババァに陰でクスクスと笑われただのと、とにかくスケールの規模がとてつもなく小さい。
ただのアルバイトであるコンビニ店員に3つ星レストラン並みの接客でも求めているのか? クリスマスを1人で過ごすのがそんなにも屈辱なのか?
そんなスケールがミジンコのように小さい事でグチグチ文句や悪口を垂れているから貧乏人なんだ。金持ちはそんなスケールの小さいことに目くじらは立てん」
ススムは一息ついてまた語りだす。
「じゃあ逆に金持ちの話はスケールが大きいんですか? 具体例はあります?」
「もちろんあるとも。金持ちのエピソードは
例えばそうだな。彼にはスポーツ選手だけでなく資産家の面もあるから金持ちだと言えるだろうが、ドイツ出身の超一流のゴールキーパーだったオリバー・カーンのエピソードはなかなか面白いぞ。
彼が20人の子供達相手に彼らがゴールを決めると日本円にして6万円払うというチャリティイベントに参加した時に、子供相手に本気を出してただの1人たりともゴールを決めさせなかったそうだ。
その後「例えチャリティイベントであろうと、子供が相手だろうと、ゴールを許すのはゴールキーパーの恥だ」と言って子供たち全員がゴールを決めた際の額である日本円で120万円相当のカネを自腹で払ったそうだ。どうだ、
ススムは機嫌よくそのエピソードを話す。
「へぇ~。そんな凄い人もいるんですね!」
「だろ? 金持ちというのはこういうものだ。コンビニの店員の態度にいちいち目くじらを立てるのがバカらしくなるだろ?
小僧、今からでも遅くはない、話のスケールだけはでかくしろ。でかくしてもバチは当たらないし言うだけならタダだからな。
それに最初は形だけだったスケールのでかさが、次第に本当にスケールがでかくなるという事もあるんだぞ。
また聞きになるがオレの聞いた話にもそんな奴は本当にいる」
ススムは景気よく話を続ける。
「昔からある名言にも「言葉には気をつけろ」というものがある。言葉はいつか習慣になり、そして運命になるというのを昔の人たちは知っていたんだ。
自分の言葉を一番最初に聞くのは自分自身だ。言葉は自分の運命を左右するほどの力を秘めているんだ。
自分の身体に入ってくるものはもちろん、外に出ていく言葉にも気をつけろ。それがお前の一生を決めるんだからな」
「そういえばススムさんは昔のことわざをよく引き合いに出しますね。信用できるものなんですか?」
進はススムがよく昔のことわざを出してくるところにツッコミを入れる。それをまんざらでもない顔をしながらススムは答える。
「フム、鋭いな小僧。オレは最初は昔の人の言葉というのを軽視していたが、その時は大した成功をつかめることは出来なかった。だが心を入れ替えてその言葉を頼りにしだすと、急にうまくいき始めたんだ。
ことわざというのは昔の人の経験則から出た物なのだろうが、バカにできる物じゃあないんだぞ。昔の人もただ無駄に生きていたわけじゃあないんだ。
その英知をバカにするやつは非常にもったいない生き方をしている。小僧、お前も暇があったら学ぶと良いぞ」
その日の授業はそれで終わった。
【次回予告】
株式市場では「いかに本能に逆らえるか」で勝負が決まるという。今回の話はそれの象徴ともいえる物だ。
第51話 「利益は先延ばし 損失は素早く」
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