第25話 資産と負債の違い
「小僧、将来的には「
「た、たいしゃ……?」
「まぁ分からんだろうな。安心しろ、小僧の脳みそでもついていけるように言い換えてやる。資産というのは『お前の財布にカネを入れてくれるもの』で、負債は『お前の財布からカネを奪っていくもの』だ。どうだ? わかりやすいだろう」
「え、ええ。確かにわかりやすいです」
資産と負債の違いを小学生でも分かるようにススムは解説をしだした。
「例えば家は自分で住むのならカネは生み出さずに固定資産税、住宅ローンなどという形でお前の財布から金を奪っていく。だから負債だ。一方、その家を誰かに貸し出せば家賃収入が入ってくる。もしそれが固定資産税や住宅ローンなどを差し引いてもなお残るというのなら資産になる。
ローンを組んで新築の家を買うのは、オレから言わせれば愚かな選択だな。
「家は資産」という「間違った話」が広まってるのはローンを組んでる間は家は『銀行にとっての』資産だからだ。特に『新品』というのがいただけない。
新築の家に1歩でも足を踏み入れるだけで中古物件になって価値は大幅に下がる。家だけじゃない、車だってそうだ。
新品の車も、買った後道路にほんの少し出ただけで中古車になる。一説にはそれだけで価値が3分の2になってしまうそうだ」
老人は若者に「資産」と「負債」、そして「新品の恐怖」を説いていた。
「小僧、お前でも「資産」を買い「負債」を買わなければ簡単に成功できるぞ」
「え、そんな簡単なことでですか!?」
「ああ。こうやって口にすれば簡単なことだ。だが大半の人間は資産と負債の違いを見分ける方法がわからない。何せカネに関しての教育を学校で一切受けてこなかったからな。ましてや小僧、お前やオレのように独学で学んでるやつとなればなおさら少ない。だからみんな「夢のマイホーム」とか言って新築の家を35年だかそのくらいのローンを組んで買う。
家は高い。家のためだけにカネを使うと投資するだけの余力がなくなる。マイホームは「夢」と言うがオレからすれば「悪夢の始まり」だな」
ススムは一般的に「夢のマイホーム」と呼ばれる家を「悪夢の始まり」と説いた。
「オレが持っている資産は不動産だな。昔は株もやってた。今ではそんなに稼がなくてもいいから不動産だけでも十分生きていけるからな」
「は、はぁ。不動産だけで年間1億ですか……ってことは俺も株や不動産を持てばいいんですか?」
「大ざっぱにひっくるめて言えばそうなるな。だが株も不動産も素人が手を出しては痛い目に遭うぞ。十分すぎる位勉強してから手を出すんだな。株や不動産で破産した奴はオレの周りだけでも何人もいる。
ただ、ここまで言っておいて否定するのも……というのはあるが小僧。お前はまだカードローンを全額返済しきれてないだろ? まずはそれからだ。
今は「溜め」の時だ。次に飛躍できるように地盤固めを最優先しろ。株や不動産について学ぶのはその後でも遅くはない。まずは借金を完済しろ。すべてはそこからだ」
急ごうとする若者を老人はたしなめる。
「は、はい。でも今から勉強してても良いですよね?」
「もちろんだとも、むしろすべきだな。戦争はいつ始まるかわからん。それと同じでいつ何が起きるかわからんから、備えだけは普段から十分しとくべきだな。
小僧、お前は朝6時に起きるから仕事の準備を差し引きすれば30分くらいは本を読む時間が出来るだろ? 課題の本以外にも読める時間はあるはずだ。
時間だけは金持ちにも貧乏人にも同じだけ与えられる。それを有効に使え。いいな?」
その日の授業はそれで終わりだった。
【次回予告】
またやってきた給料日前日。気づけば8月も間近になっていた。いつものように成果を出す進。だが今回、彼は師に聞きたいことがあった。
第26話 「株と不動産」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます