第17話 国民総バカ化計画
6月になり、梅雨の季節となった。雨が降る日が多くなるがそれでもススムは施設に通っていた。今日は雨の日なので屋内で話が始まる。
「あ、ススムさん。こんな天気でも通ってくれるんですね」
「まぁな。カネを払っている以上元は取らんとな。ところで小僧、お前はTVやパチンコやソシャゲは好きか?」
「いえ、特に好きってわけじゃないですけど……何かあります?」
「ならいい。いいか? パチンコもソシャゲもTVも究極のバカ製造機だ。
オレはTVを見たとしてもニュース番組、それも大半が天気予報だ。その程度しか見ていない。無論パチンコやソシャゲなぞやらん」
さも
「TVには何の価値も無い。アレはただ芸能人の噂話をはじめとした「面白そう」で「何の価値も無い」情報がモニターの前で炸裂しているだけだ。
「情報バラエティー」などと
ススムのTVに対する憎悪は並の物ではないのか、止まらない。
「ニュース番組とて例外ではない。コロナウイルスが流行した際は何人死んだ、だのあそこで感染が起きただのばかり言って不安をあおる情報ばかり流して、政府の支援策を大々的に報じる番組は皆無だった。
ニュース番組も視聴率を稼ぐ事とスポンサーへのゴマすりばかりで、視聴者のことなど何一つ考えん。
『手っ取り早く注目を集める為にとりあえず死体を転がす』事ばかりやって、真に有益な情報は一切流さない。視聴率稼ぎにどいつもこいつも死体を転がしてるだけだ。
何がジャーナリズムだ? 何が報道の使命だ? 笑わせる、と言いたいどころか実際にはあまりにもくだらなすぎて乾いた笑いすら出ん」
死体を転がして視聴率を集めているだけ。老人はTVをそうバッサリと斬り捨てる。
「考えてみろ。芸能人が不倫することでオレ達の生活は変わるのか? 株価は上がるのか? 何も起きないし変わらないじゃないか。その暇があればマンガ本でも読んだ方がはるかに生産的だ」
怒りに任せススムの口が止まらない。
「パチンコとソシャゲはもっと下らん。TVは無料だがそれらは有料だ。しかもどちらもやろうと思えば1時間も持たずに1万円が無くなるほどのとてつもない浪費だ。
1万円あれば本が何冊買える? オーディオブックがいくつ買える? あんなものがあるから日本経済は不況のままなんだ!
TVとパチンコとソシャゲがあるせいで日本人はどんどんバカになっていく!
もしもパチンコやソシャゲに無理やりにでも何か価値があるとすれば『暇を持て余したバカがどう搾取されるかの見本市になっている』ところだ」
ススムの口は言い足りないのか、まだまだ止まらない。
「実際コロナウイルスが流行した際に自粛に応じずに開店しているパチンコ店を公表したら逆にそこに客が集中したと言う珍事も起きた。
それにパチンコ依存症になって治療施設に入れられた患者の中には
『パチンコ辞めたら1億円貰えますか? 俺はパチンコをやってれば貰えると思ってますので続けますね』などとほざいたそうだ。
2、3発ぶん殴られても文句は言えん暴言の極みだな。
もはやどんな神であろうが、どんな仏であろうが、救いようがないクズの中のクズだ」
進の目の前にいる老人は、そこまで言うかという位に徹底的に非難した。
「というわけだ小僧。オレからすればこれらはお前の人生に何の役にも立たないどころか足を引っ張るだけだ。例え友人を2~3人失うことになるとしても距離を置け。文字通り百害あって一利なしだ。これにハマってる間は絶対に金持ちになれないと
TVは天気予報を見る程度にとどめ、パチンコもソシャゲもやるな。これらはお前の人生に確実に悪影響を与えるからな」
老人は若者にそう説いた。
「……そこまで言いますか」
「これでもまだまだ言い足りん位だ。パチンコやソシャゲが好きな金持ちなど見たことが無いからな。やってるやつはオレの知り合いにもいるが全員並以下だな。大成はしていない。アレはカネと時間をドブに捨てるようなもので、何ら生産的なことはない底なし沼だ。小僧、お前はハマるなよ」
老人は若者にくぎを刺す。決してハマるなと強く、強く、念を押した。
【次回予告】
「カネの奴隷」あるいは「ラットレースのネズミ」になっている人間を支配する、4つの感情。
第18話 「恐怖とあせりと欲望と無知」
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