第21話 壮国
飛翔の知る、
人々はそこをデルタ地帯と名付け、稲作や畑作を始めたが、治水管理が難しく定住できる地域では無かった。
統一王朝、ラオプタヤ王朝の財力や、土木技術の発達によって、ようやく貯水地がつくられ、堤防が整備されて、徐々に緩やかな氾濫管理が行われるようになったのであった。
現在では、大規模な稲作地域として、
雨季と乾季があるが、一年を通して暖かな気候のため、
旅行記には、治水工事の様子や、稲作風景の描写が細かく描かれていた。
また、農地について、ラオプタヤ王朝から引き継いだ後、農民へ一定の広さを分け与えたほうが良いと提言し、一定農地の私有化が、生産意欲の向上に役立つと付け加えられていた。
若い官吏の言葉を、どこまで
広大な国土をもつ
当然、その長は、中央から赴任した役人が務めていたのだが、それ以外の役人については、採用試験に合格しさえすればそのまま雇用が維持された。
つまり、制圧した地域の人々をそのまま雇用したのである。
ここが、
そのまま地域の雇用が確保される、地域の特色が生かされる……その保証があると、無用な争いや反発が減り、人材の無駄や能力の喪失も防げる。
今までと変わらない悪習が立ちきれない場合もあるが、そこは中央からの役人が手をくだす。
採用試験も二通り用意された。
これも、昨日まで敵だった人々にも出世の道が閉ざされていないという希望に繋がった。
こうして、偏見無く、優秀な人材を集めようとした
できれば会ってみたかったな……
門戸を広げながらも、鉄壁の中央集権国家体制を貫く、
だが、唯一例外を設けたのが、海洋都市バンドスであった。
貿易商人の街バンドス。
港の貿易で富を得た商人たちは、次第に力をつけ街に貢献するようになっていく。
多数の商人が協力して街を守り、国を作り上げていく過程で、みんなで協議しながら街を統治していく方法が編み出された。
その協議の場は、『
これは、
そんな人々に、いきなり頭ごなしに皇帝の強権を振りかざすのは得策でないと判断した
もともと存在する
これにより、反発を最小限に抑えることに成功している。
だが、
反発を抑えながらも、商人の財力を国へ回収することは忘れない。
自治を認める代わりに、港で取引される商品に港使用料を認めさせたのだ。
一つ一つに掛けられた使用料は低く抑えつつも、全体の利用料を考えると大きくなる。
こうして、
バンドスはその頃も美しい港街だった。
白い壁、青い屋根の建物が立ち並び、海の青さを引き立てた。
街の中央には、美しい模様の彫られた時計台もあり、時を刻んでいる。
街中に楽し気な楽器の音が鳴り響き、美しいガラス細工が店先に並び、美味しい
海……
飛王が行きたいと言っていたな。
海賊の話や貿易商人の話を聞くのが好きだったよな。
そう言えば同期の
俺もいつか見に行かれるだろうか?
飛翔は、そこまで読み進めたところで、どうにも瞼が重くて耐え切れなくなってきた。そのままベッドに突っ伏して、いつの間にか眠り込んでしまった。
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