第20話 旅行記
飛翔は部屋へ戻ると、ドルトムントから貰った、メッキの禿げた腕輪を出した。
そして、腕輪の内側にある仕掛けをそっと開けた。
そこには、少しだけ空洞ができていて、大切な物をしまっておくことができるようになっているのだ。
この腕輪は、
その当時は美しい金色で覆われ、宝石などもあしらわれていたはずである。
飛翔は、リフィアの両親が交わした腕輪を見せてもらったことがあったので、よく知っていたと同時に、思い出深い品でもあった。
飛翔はベッドの下から青い肌着を取り出すと、胸元の縫い目をほどいて、
それは、見事な美しい球体をしており、宇宙のような深い群青に星のような煌めきを宿した石だった。
飛翔はそれを大切そうに腕輪の内側に入れて、自分の腕にはめた。
そして青い肌着をもう一度ベッドの下に押し込んだ。
ドルトムントに渡された旅行記。
深い緑色の表紙で、中は手書きの
最初のページをめくった飛翔は、軽い衝撃を受けた。
『亡き
飛翔からすれば、
『
続く言葉を見て、更に言葉を失った。
確かに……国土を統一すると言うことは、平和と発展の基本だな。
その過程で、どれだけ血なまぐさい戦があったとしても、統一を成し遂げることができれば、その後に生きる子孫にとって、これほど大きな贈り物は無いんだな……
それは今でも間違っているとは思わない。けれど、それで滅びてしまえば、それでも戦わなかったことを良しと言えるのだろうか?
聖杜の子孫の未来をつぶしてしまう事では無かったのか。
今になって、
国を守るとは?
国民を守るとは?
王子として、俺は何をなすべきだったのか?
これから何をなすべきなのか?
飛王はあの後、どうやって民を守ったのか?
一人でどうやって……
聖杜のその後を知るには、まず千年後の、現在の姿を知らなければ始まらない。
飛翔は自らの心を奮い立たせるように、続きを読み始めた。
この旅行記の著者であり、旅人の
そこで
この本が書かれたのは三十年ほど前のようだが、
と言うことは、次期王の
そう言えば、今は荘暦六十八年と言っていたな。
と言うことは、
そんな事を考えながら続きをめくった。
王都、
周りを取り囲む山々が天然の要塞となって、
建造物は周りの山から切り出された木造建築が主流。
四季があり寒暖の差も激しいため、冬は雪が降ることもある。
皇帝の住まう王宮を中心として、
それぞれ、
一見すると、分権化された公正な政治が行われていそうに見える。
だが実際には、この上の最高機関として、絶対権限を持つ
千年の時を超えてもなお、絶対君主制を維持していたのである。
皇帝の警戒ぶりは、王都の街並みにも表れている。
ところが、その道は所々で行き止まりが作られ、右へ左へ方向を変えながらしか、前に進めないようになっている。
王宮まで一本の道で進むことができないように用心された作りとなっていた。
王都育ちには珍しく、外の世界への興味が大きかった
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