インティオとオメガ 中編1

 列の最前では、1人を囲んで大勢の人が並んで罵倒をしていました。

 囲まれている1人は、罵倒全てに耳を向け、一つ一つに腰を九十度に曲げて謝っていました。

 その姿がとてもかわいそうに思って、イノセントはその1人と大勢の間に割って入ります。

「この子は悪くない!悪いのはニクス君と僕なの!

 本当に、ごめんなさい!」

 イノセントが頭を下げると、ニクスも

「雪は俺が降らせたんです。ごめんなさい」

 と大きな声で言って頭を下げました。

 突然現れた魔法使いに、その場は一瞬静まりました。

「あの、どなたですか?」

 さっきまで謝っていた青年が2人に聞きます。

「あ、えっとはじめまして。

 僕はピュリティ・イノセント。この子は友達のニクス。」

「友達じゃなくて弟子です」

「え、そうだっけ?」

「え、そうですよ?」

 え?という顔で、二人は顔を見合わせます。

「僕はこういうものです」

 青年は名刺を取り出して、イノセントに渡しました。

 それをイノセントは読み上げます。

「S区気象庁気象管理局。インティオ。」

 つまり、天気予報士です。

 2人は、ニクスはいつも雪を降らせていること、S区に入る直前に魔法を止めたこと、しかしそれが原因でS区でも雪が降ってしまったかもしれないことを話します。

「ということは、今回のことは僕のせいじゃないということですか?」

 インティオが驚いたように言います。

「はい、きっと」

 本当にごめんなさい、とニクスが頭を下げます。

 インティオがほっとした表情をした、その時です。

 三人の目の前に小さな黒い球体が飛んできました。

 その球体は光が伸びし、空中に一人の青年の姿を映し出しました。

 S区の行政、司法、立法、管理をすべて行っている、高性能AIのオメガです。

 オメガは無表情で三人にこう言い放ちました。

「判決を言い渡します。

 インティオ、処分。イノセント、ニクス、厳重注意」

「……え?」

 イノセントとニクスは驚きで目を丸くし、インティオは顔を蒼白とさせました。

「な、何故ですか!? 僕のせいではないはずです!」

 インティオがオメガに向かって叫びます。

 それにオメガが答えます。

「気象管理における業務上過失罪です」

 漢字だらけの答えに、イノセントとニクスは首をかしげます。

「オメガ君。僕らもわかるように言って」

 イノセントはオメガが結論から話す癖をよく知っています。

 オメガは瞬きを一度すると、わかりました。と答えました。

 しかし説明する前に、金属の輪を放ってインティオを拘束しました。

 インティオの喉がヒィとなります。

「嫌だ、死にたくない。どうして」

「二度も同じことは説明しません」

「貴方も同じ人工知能でしょう!?」

「同じ人工知能だからですよ」

 オメガは指を一振りして、輪を操作してインティオをタワーの外に出してしまいました。

 一瞬の出来事にイノセントとニクスはギョッとしました。

「インティオ君をどこに連れて行ったの!?」

「処分のために、廃棄処理場に送りました」

 オメガはイノセントの質問に淡々と答えます。

 ニクスは眉をひそめて呟きます。

「そんな、まるで人をゴミみたいに」

「ゴミです」

 オメガは変わらない口調でそう言いました。

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